抗体検査でクラス2以上の値が出れば次にハチに刺されたとき、アナフィラキシー症状が出る可能性がある。だが、クラス0でもアナフィラキシーショックを起こした例はある。

アナフィラキシー症状が重篤な場合、最悪、ハチに刺されてから15分ほどで死に至ることもあるという。救急車も間に合わないとしたら、どうすればいいのか。

「アナフィラキシーショックを起こす恐れがあるなら、救命措置として血圧を上げるアドレナリンの自己注射薬『エピペン』を所持しておくことです」

エピペンは、食物アレルギーがある人たちも携行している。

「患者さんのなかには養蜂家の方がいます。ミツバチに刺されることが多く、それで死にそうになった人がいます。そのため、必ずエピペンを持つように指導しています」

大人になっても影響が残る

初めて刺された場合でも、一度に多数のハチに刺されれば、アナフィラキシーショックと同様の症状を起こすことがある。アナフィラキシーショックは、ハチ毒成分とIgE抗体が結合することにより活性化した肥満細胞から大量のヒスタミンが分泌されて引き起こされるが、元々ハチ毒にはヒスタミンが含まれている。

「1匹のハチ毒に含まれるヒスタミンは少量です。けれども、スズメバチの巣を刺激するなどして、多数のハチから一度に攻撃された場合など、大量のヒスタミンが注入され、即時型アレルギーと同様の『アナフィラキシー様症状』が出て、亡くなることがあります」

記者は小学生時代に2回、アシナガバチに刺されたことがある。今後、ハチに刺されてしまうと、危ないのか。

「刺されてから10年以上たつと、IgE抗体価はかなり下がるので、リスクはかなり低いでしょう。ただし、個人差が大きいので一概に『大丈夫』とは言えません。心配でしたら検査を受けてください」

また、ハチに2回以上刺されると、アナフィラキシー症状が出なくても、翌日以降、再び腫れが出る可能性がある。

「これは遅延型反応です。命にかかわることはありませんが、ハチ毒の遅延型反応が出現する体質は人によっては長期間残ります」

「毒のカクテル」と呼ばれるハチ毒。症状は複雑で、刺されればさまざまなリスクがある。正しく知って備えたい。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

当記事は「AERA dot.」からの転載記事です。AERA dot.は『AERA』『週刊朝日』に掲載された話題を、分かりやすくまとめた記事をメインコンテンツにしています。元記事はこちら
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