「下降婚が少ない社会では出生率が低い」という現実

「上昇婚」でなかったから、やはり満足できずに離婚した、と言いたいのではない。それよりも、彼女の離婚が耳目を集める要因と、日本社会における「下降婚の少なさ」が「同類婚の減少」に通じているところが重要なのである。

2011年時点で教育社会学者の福田亘孝氏は、「日本の少子化の要因は婚姻年齢上昇にある」という命題は実証分析では支持されない、と述べている。結婚する年齢が上がるために少子化になっている、わけではない、という。であればなおさら、そもそも結婚しなくなっているところにこそ、少子化の原因のひとつがあり、結婚しない理由として、上に挙げた「上昇婚」へのこだわりがあるのではないか。

実際、赤川氏が論じる通り、「下降婚が少ない社会では出生率が低い」という知見が得られる。日本社会は、まさしくこれに当てはまる。「下降婚」だけではなく「同類婚」も避けられており、独身時代の生活水準を保ちたい、あるいは、学歴の低い男性とは結婚したくない、と考える女性が多いと見られる。だからこそ、小林氏の離婚は、この私の記事を含めて大勢が論じたくなる話題なのではないか。

「少子化で日本が滅びる」は絵空事ではない

ここで、「上昇婚」をあきらめるべきだ、と説教したとしても、百害あって一利なしである。「おひとりさま」が流行語になった時代は遠くなり、今や「子持ちさま」と子育て世代が揶揄される。結婚も子育ても、特権階級にみなされるほどに、生涯未婚率は高まり、少子化が進んでいる。小林氏の離婚は、そんな流れにさおさす出来事だった。

合計特殊出生率が1.0を切っている韓国や台湾ほどではないものの、このままのペースで少子化が進めば、やがて日本が滅びる、そんな懸念も絵空事ではない。いまさら「産めよ、増やせよ、国のため」などというスローガンは掲げられないし、少子化=国の消滅とストレートには結びつかないものの、それでも、「上昇婚」を好むこの国のムードを、止められない以上、すぐに歯止めはかからない。

東京・渋谷の交差点を行き交う人々
写真=iStock.com/CHUNYIP WONG
※写真はイメージです

小林氏が「上昇婚」をあきらめられないのかどうかはわからないが、少なくとも、過去2回の結婚は(小林氏の視点からは)「同類婚」か「下降婚」だったと見られる以上、現代日本の典型例ではない。そんな彼女が紡いだ言葉は、「上昇婚」をあきらめられない私たちに刺さったのである。

【関連記事】
子どもを育てた経験のない大人が激増している…「子持ち様はずるい」の批判が過熱する根本原因
結婚できないオジサンに人権なんかない…生きているだけで冷遇される「弱者男性」の悲痛な叫び
「私が稼がないとやっていけないでしょ!」休日も働くキャリアウーマンが婚約者にモラハラしてしまう深い事情
一度も彼女ができない理由は「顔と家族」…上場企業勤務で年収1000万円の30歳男性が悩む「生きづらさ」の正体
仕事もない、話し相手もいない、やる事もない…これから日本で大量発生する「独り身高齢男性」という大問題