自分は成果を出していないのに若手に忠告をする人がいる。一体なぜなのか。2022年に韓国で最も売れた自己啓発書『逆行者』の著者であるジャチョンさんは「自意識を守ってばかりで何の挑戦もしない『自意識ゾンビ』になっている。まずは自意識を解体することが重要だ」という――。

※本稿は、ジャチョン著、藤田麗子訳『逆行者 お金 時間 運命から解放される、人生戦略』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

ネット記事にコメントする「自意識ゾンビ」たち

「ビル・ゲイツ? ただ単に運がよかっただけでしょ。プログラムを一つ作って、億万長者になったんだから」
「iPhoneを作ったのはスティーブ・ジョブズじゃないよね。ジョブズは、真の天才のウォズニアックに便乗しただけだよ」
「ウォーレン・バフェットが慈善家だって褒め称えられてる理由が理解できない。あの人は株で儲けただけじゃないの? ただの投資家じゃん」

誰が書いた文章なのか? ネイバーニュースの記事についたコメントだ。お金に関するインターネット記事のコメント欄には、決まってこんな意見が上位に並んでいる。こんなコメントをする人は「自意識ゾンビ」といえる。自意識を守ってばかりで、何の挑戦もしない。ベッドの上でコメントを書き込み、社会的に大きな成果を上げた人をこきおろして満足する。ネズミがエサの出てくるボタンを押すように、彼らは自意識を傷つける優れた存在を見つけると、反射的にけなそうとする。ゾンビと変わらない。フェンスの中にいるニワトリと変わらない。あなたがもし自由を求めていないなら、こんな人生のままでもいいだろう。しかし、自由を手にしたいという気持ちがあるなら、自意識ゾンビから脱しなくてはならない。

ラップトップで仕事をする人
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不幸や貧困の多くは「自分を愛しすぎている」せいで発生する

自意識はすさまじい。少なくとも数十万年を人類と共に歩んできた、しぶとい本能だ。僕たちの遺伝子は自意識をふくらませる。そのうえ現代社会においては、我が子をちやほや育てる親、他人の関心を集めるためのSNSによって、ただでさえ大きな自意識がどんどん肥大化していく。

自意識を満足させれば、一時的には幸せになれるかもしれない。しかし、いつかは失墜する。物事が間違った方向に進み、人が離れていく。性格がおかしくなるだけではない。自分を客観的に見ることができず、人生につまずいて貧困に陥ることになる。安山で暮らしていた頃の僕、ジヘに嫉妬したギョウォン、ネイバーニュースにコメントを書き込む彼らのように、不幸を呼び寄せてしまう。順理者(遺伝子、無意識、自意識の操り人形として、生まれ持った運命に従って生きる人々)の人生だ。

不幸や貧困の多くは「自分を愛しすぎている」せいで発生する。自意識は人間を大きく成長させる原動力でありつつ、人生を不幸と貧困に陥れる主犯だ。周囲を見てみよう。

幼い頃はとても優秀で、いい大学を出ていても、数百冊の本を読んでいても、不思議なくらい何も果たせていない人がいる。そんな人をそばでよく観察すると、たいていは自意識に縛られて、もどかしいほど意固地になっている。彼らは持って生まれた才能を伸ばすことができずに退化する。誰かに耳の痛いことを言われたときの言い訳も常に用意している。親が、時代が、適性が、好みが、健康状態がよくないからだと言う。誰もが知っている真の原因から、本人は目をそらしている。