わが子から「うるせー」「ババァ」といった汚い言葉をぶつけられたらどうすべきか。幼稚園長で児童文学作家の小島宏毅さんは「怖い顔で怒っても、問題は解決しない。親が力で押さえつけるのではなく、親子での対話の機会と考えたほうがいい」という――。

※本稿は、小島宏毅『孫子の兵法から読み解くAIに負けない「すごい知能」の育て方』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

子どもの手を取って話す親
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子育ては、だまし合いなり

子どもは第一次反抗期を迎えるころになると、悪い言葉や汚い言葉を覚えてきて、「うるせー」とか「ババァ」などと母親に向かって言うこともあります。その場合には注意が必要ですが、注意すべきは、子どもは本心で言っているわけではないということです。覚えたての言葉を使ってみたい、親の反応をおもしろがって言っている、というだけのこともあります。

しかし、母親とすれば子どもの言葉を真に受け、「だれがババァなのよ!」と真剣に怒りたくなりますが、それは大人気ないことです。かえって相手の思うツボにはまるだけで、子どもはそんな反応を見てニヤニヤするだけでしょう。その顔を見るとますますムカムカしてきて罵声を浴びせる、という負の連鎖につながり、戦闘勃発の一歩手前という状態に至りますが、しょせん「子育ては、だまし合いなり」なのですから、あまりムキにならないことです。

昔は、「悪いこと言うのはどの口だ!」と怖い顔をして子どもに迫り、ほっぺたをつねる、ひっぱたくという仕打ちをする親、子どもが痛いと泣いても「悪いことは許さない」という厳しい態度を貫く親が多くいたものです。しかし、罰や痛みを与えるだけでは、子どももたまりません。時代的な背景もありますが、いまは体罰を与えるより、子ども自身に「自分が悪い」ということを理解させるという方法をとるべきです。

反抗期の子どもと向き合う「5つのステップ」

それには、親が力で押さえつけるのではなく、親子での対話を選択しなければなりません。ここで、第1章で述べた「こころのコーチ」の手法を応用してみましょう。

STEP1:子どもの気持ちに気づく

もしも悪い言葉を言ってきたら、「子どもの気持ちに気づく」ことが大切です。先に述べたとおり、子どもが悪い言葉を使うのには、おもしろがっているということもあります。そこで、「ハハーン、この子は親の反応をおもしろがっているんだな」と理解してあげます。

STEP2:「教育の場面」ととらえる

次段階は、「教育の場面ととらえる」です。まさに、ここは教育的指導をするのに絶好のチャンスですから、見逃さないようにしましょう。

STEP3:共感する、子どもの抱いている感情は妥当だと考える

次のステップは「共感する」です。悪い言葉を使いたくなるのは、子どもにはよくあることだと理解し、子どもの感情を妥当だととらえることです。