在来線のロングシートは「7人掛け+3人掛け」が基本

在来線普通列車の座席は、横向きのロングシート、前方を向いたクロスシート、固定式のクロスシートが向き合ったボックスシートに大別でき、用いられる地域や列車種別によってこれらを組み合わせているが、通勤電車の多くは1両すべてがロングシートとなっている。

通勤電車がロングシート主体なのは、ラッシュ時間帯の乗車効率を高め、乗降時間を短縮するためだ。通路が狭いクロスシート車は奥まで進みにくく、実際の収容力はさらに小さい。また乗客がドア周辺に密集するため、乗降に時間がかかる。

同じ20m級の中間車1両あたりの定員を比較すると、オールロングシートのJR東日本「E235系」は定員160人うち座席定員51人、オールクロスシートのJR西日本「225系」は定員145人うち座席定員46人で、ロングシートの収容力の高さが際立つ。

では一般的な7人掛け、3人掛け(車端部)ロングシートの乗客1人あたりの座席幅はどのくらいか。明治末、山手線向けに製造された最初期の電車「ホデ6110形」のロングシートは5.3mで12人掛けだから1人あたり44cm、1957年に登場した現代電車の祖と言える国鉄「101系」電車は3mで7人掛けだから1人あたり43cmだった。

最初期の電車のロングシート(鉄道博物館にて)
筆者撮影
最初期の電車のロングシート(鉄道博物館にて)
戦前昭和期の電車のロングシート(鉄道博物館にて)
筆者撮影
戦前昭和期の電車のロングシート(鉄道博物館にて)

詰め込み型から快適型に合わせて座席も拡大

鉄道の仕様を定める運輸省令「国鉄構造規程」「地方鉄道構造基準」及びこれを統合した「普通鉄道構造規則(2002年廃止)」は1人あたりの座席幅を40cm以上としていた。1950年代に製造された古い私鉄車両には41cm程度の座席もしばらく残っていたようだが、これはあまりにも狭い。

上記のように国鉄電車の43cmが標準となり、1979年に制定された日本工業規格「鉄道車両旅客用腰掛(JIS E7104)」も、ロングシートの「一席あたりの有効幅」を43cmと定めている。

変化し始めたのは1980年代末から1990年代前半にかけて。高度成長期に投入された通勤車両の置き換えにあたり、従来の詰め込み型の通勤を前提にした車両から、質的な向上を意識したものに代わってからのことだ。

例えば東武鉄道が1988年に導入した「20000系」や、営団地下鉄(現東京メトロ)が1993年に導入した「06系」「07系」、そしてJR東日本が1993年に導入し、後の通勤電車のスタンダードとなった「209系」が45cmに拡大。他社も順次、1~2cmの拡大を図った。2000年代以降は46cmがスタンダードになり、JIS規格も2015年、46cmに改正された。