特別なことはせず、「何でも自分でこなし、忙しく過ごしてきた」

そんな吉江さんに、私は長生きと元気の秘訣ひけついてみました。

「忙しく過ごしてたからかねぇ。特別なことは何もしてないよ。食べ物も特別贅沢ぜいたくなものは食べてないし。家にいたときは、朝から晩までずーっと畑仕事をしてたの。家のことも買い物も全部自分でしてたから。それに、何かあれば子どもたちは近くにいるし、心配もないからね」

100歳を超えても、現役で一日中畑仕事をしていたことに私は驚きましたが、何でも自分でこなし、忙しく過ごしてきたからこそ、吉江さんは今まで元気に暮らせたのではないかと思いました。

私はさらにその元気の秘訣を探ろうと、吉江さんに一日の過ごし方を詳しく訊いてみました。

朝は5時に起床。簡単な朝食を食べる。7時過ぎに畑仕事に出かける。お昼に家まで戻り、お昼ごはんを食べてひと休み。また午後から畑に戻り仕事をする。夕方に帰宅し、夕食を食べてお風呂に入る。そして夜8時には就寝する。

そんな生活を長年してきたと吉江さんは教えてくれました。

食事も、畑で収穫した野菜を使ったお漬物や、お味噌汁とごはん。魚もお肉も好き嫌いなく食べると教えてくれました。そして、食事はいつも腹八分目で終わりにしていたそうです。

味噌汁を飲む日本人女性
写真=iStock.com/kumikomini
※写真はイメージです

60代、70代の方なら特に驚くような生活ではないかもしれませんが、これが100歳を超えても自分でこなせていることに私は感心しました。

高齢の親への心配が本人のできる力を消してしまう

もし、吉江さんが高齢を理由に、上げ膳据え膳の生活をしていたら、どうなっていたでしょう。足腰は弱り、どんどん歩けなくなっていたかもしれません。

畑仕事がなければ身体を動かす機会も減って、動かないためお腹もすかず、食事量は減り、次第に体力もなくなって、栄養状態も悪くなり、一日中寝て過ごすようになっていったかもしれません。

家族は高齢の親を心配するがゆえに、あれやこれやと何かしてあげないと不安で、知らず知らずに本人のできる力を消してしまうこともあります。

「おばあちゃん、もう歳なんだから畑仕事はやめてちょうだい」
「一人暮らしなんて心配だから施設に入りましょう」

そんなふうに言って、本人が自分で生活できる力があっても、家族の不安がそれを妨げてしまうこともあるのです。

吉江さんが一人暮らしを続けられるのは、家族が吉江さんの希望を尊重し、信じているためでしょう。吉江さんが自分のことを自分でできるから、家族も大きな不安を抱かないのです。

自分ができることを続け、どんなに忙しくても自分らしく暮らすこと。そして、その生活を続けることを諦めないこと。

それが、吉江さんにとっての長生きの秘訣なのだと私は学ばせてもらいました。