また私の伯父は、この手の取引にハマったことで、自殺未遂をしてしまうところまで追いつめられてしまいました。この伯父はエリート中のエリートで大手証券会社の取締役をつとめ、次期社長候補ともいわれていた人です。私たちの親族のあいだでは期待の星でした。

伯父の場合は、時代的なこともあり、FXではなかったのですが、ゴルフ会員権や不動産取引にも手を出していました。それでバブルが弾けたときに大きな損失を出してしまったのです。

06年に新会社法が施行されるまでは、自己破産をしていると、免責が確定するまで取締役にはなれない決まりになっていました。それで身動きがとれなくなってしまったのです。ある程度の地位に就いていると、それはそれでSOSを出しにくくなるものです。

結局、伯父はこのときの痛手から立ち直れず、60代の若さで亡くなりました。

ポイントは「早期発見」「早期介入」

FXにハマるような人は、もともとギャンブルをやっているという意識がないので、本人も家族もギャンブル依存症に結びつけることが難しいという問題があります。

そのため、いよいよ窮地に陥ったときにも、本人ではなく家族が、いろいろな相談窓口を訪れ、その中でこの問題に詳しい人にたまたま出会ってはじめて、ギャンブル依存症にあたるのではないかと気がつくようなケースが多く見受けられます。ですから当然、遠回りになりがちで、むしろ答えにたどり着けたなら運がいいほうだともいえます。

家族の方などが、ギリギリの段階で相談窓口に来た場合に私たちがよく勧めるのは、本人がお金を使えないようにすること、すなわち“兵糧攻め”です。

そのため、相談者が当事者の奥様の場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる「婚姻費用分担請求」の制度を利用する場合もあります。

これは夫婦のどちらかがどんどんお金を使ってしまうときなどに、婚姻生活を維持するために必要な費用(生活費、医療費、教育費など)をどのように分担するかを決めるものです。この調停によって法的効力がある給与の差し止めができます。

給与差し止めとなれば、当然、会社に状況を知られるので、本人があわてて話し合いに応じて実際には調停まではいかず、ゆさぶりをかけた段階で回復に向き合うようになることもあります。

それでも効かなければ、本当に差し止めをかけます。

それくらいのことをしなければ、本人は依存症だと認めることができず、回復につながらないのです。依存症が“否認の病”といわれるゆえんです。