ただ、こうした兵糧攻めには当然ですがリスクを伴います。
ゆさぶりをかけた段階でキレて、やけくそになったり、兵糧攻めに入ったあとに、お金に窮して犯罪行為に手を染めたり、自殺の可能性もゼロではありません。
そういった全てのリスクを話したうえで、究極の選択として、どうするかを決めます。
家族が相談に来るような段階では、病気はかなり進行している場合がほとんどなので、断腸の思いで決断をしなければ、さらなる泥沼にはまっていくだけです。
依存症はとにかく少しでも「早期発見」「早期介入」できるかどうかがポイントです。
兵糧攻めにすると、本人が問題に直面することになるのでそこから回復へとつなげていくことができます。
自尊心とプライド
ギャンブル依存症は、自尊心が低くてプライドが高い人に多いといえます。
両者は混同されやすいところですが、自尊心は自信に由来していて、プライドは劣等感に由来するといわれます。
わかりやすく分けるなら、自尊心は自分を大切にする気持ちで、プライドは他人の評価を気にする感情です。
そのため、自尊心は当然必要ですが、間違ったプライドは捨ててしまったほうがよいのです。
プライドが高くて、社会的な地位が高い人は、自分がギャンブル依存症であることを簡単には受け入れません。
自助グループにつながったりカウンセリングを受けるような弱い自分を受け入れられず、自分の人生はおしまいだというくらいに考えがちなので、それが治療のネックになっています。
「エリート街道を歩んできている人」
「まじめで手堅いように見える人」
「経理などの堅い仕事でありながらお金を動かしやすい役職に就いている人」
「管理職や役員といった地位に就いている人」
こうした人たちほど注意が必要になります。それもまたこの事件から得られる教訓のひとつです。
ギャンブラーというと、信用のない、だらしない人間というイメージを持っている人も多いとは思いますが、そんな人間は役員などの地位にはなかなか就けません。地位があってこそ、大きなお金を動かせるのですから、常識では計り知れない病気がギャンブル依存症なのです。