サラサラ唾液は歯周病も防ぐ

歯、舌、のどなどには、300~700種類の細菌がそれぞれ固有の生態系を築いて棲みついており、歯磨きなどの積極的なケアを怠ってしまうと、その総数は1兆個にも増えると言われています。

なかでも、私たちの健康に大きな影響を与えているのは、歯周病の原因となる歯周病菌。歯周病菌のほとんどは、酸素があると生きられない偏性嫌気性菌です。酸素を嫌うため、歯と歯ぐき(歯肉)の境に生じる歯周ポケットに潜んでいます。(ちなみに、虫歯の原因となるミュータンス連鎖球菌も酸素を嫌いますが、多少の酸素ならあっても生きられる通性嫌気性菌です)

歯周病予防の基本は、歯ブラシや歯間ブラシなどで口腔内を清潔に保つことですが、加えて舌ストレッチでサラサラ唾液の分泌を促すことも大いにプラスです。

歯を見せる人
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

歯を失う原因の第1位

歯周病の実態と案外知られていないそのコワさについて理解しておきましょう。

歯周病には、成人のおよそ80%が罹患りかん(りかん)しているとされています。歯の周辺の汚れ(プラーク)に含まれる歯周病菌からの毒素の影響で炎症が起こり、進行すると歯ぐきの奥まで炎症が進みます。さらに、歯を支える土台となる骨(歯槽骨しそうこつ)が溶けると、歯を失うリスクが高まります。実際、大人で歯を失う原因の多くは、歯周病です。

2018年に全国2345の歯科医院で行われた「全国抜歯原因調査」によると、歯を失う原因は歯周病が約37%でトップ。次が虫歯で約29%となっており、若い世代では虫歯で歯を失う人が多く、40代以降は歯周病で歯を失う人が増えてくるという特徴があります。

歯周病菌やそれがつくり出す毒素は、血液に入り込み、全身をめぐります。歯周病は、口のなかのローカルな病気ではなく、全身に悪影響を及ぼし、糖尿病などの生活習慣病の引き金となります。

たとえば、歯周病菌がつくり出す毒素は、脂肪細胞や白血球から誘導される悪玉物質(TNF-α)を増やす働きがあります。TNF-αは、血糖値を下げるインスリンの働きを抑えてしまうため、糖尿病が悪化します。糖尿病が悪化すると、さらに口内環境も悪化して、健常人と比べると、歯周病が2倍以上増加することもわかっています。