死をも招く歯周病

歯周病菌は、日本人のおもな死因とも深く関わっています。

日本人の死因の1位はがん(悪性新生物)。2位は心疾患(心臓病)、3位は老衰、4位は脳卒中(脳血管疾患)となっています(出典:厚生労働省『令和4年人口動態統計』)。

そして脳卒中に次ぐ死因の5位を占めているのは肺炎。歯周病菌は、なかでも誤嚥性肺炎の引き金になります。

死因2位の心臓病、4位の脳卒中の背景には、血管が硬くなり、血栓という血の塊が詰まりやすくなる「動脈硬化」があります。歯周病菌の毒素は、この危険な動脈硬化を悪化させることがわかっており、動脈硬化を起こした血管から歯周病菌が見つかることもあるのです。

動脈硬化を起こした血管のイメージ
写真=iStock.com/Rasi Bhadramani
※写真はイメージです

認知症にも関わることが判明

さらに近年、歯周病は認知症にも深く関わることもわかってきました。

認知症とは、脳をつくっている神経細胞の機能が落ちてしまい、記憶や学習といった認知機能に障害が出る病気。進行すると、社会生活にも日常生活にも多大な支障をきたします。

高齢化が進む日本では、認知症は現在進行形で増え続けており、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症と診断されると予測されています。

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介護認定を受けていない65歳以上の人を対象とした研究では、歯がほとんどなく義歯も使用していない人は、20本以上の自前の歯をもつ人と比べて、4年後に認知症になるリスクが1.85倍高くなることがわかりました(出典:Yamamoto et al., Psychosomatic Med. 2012)。歯の本数が減ると咀嚼力が低下して、その影響で脳血流が低下したり、栄養状態が悪くなったりすることが関連していると考えられています。

また、歯周病は、日本で認知症の67.6%を占めるアルツハイマー型認知症にも影響を与えています。

アルツハイマー型認知症は、脳内でアミロイドβという異常なタンパク質が溜まり、脳を構成している神経細胞がダメージを受けることで生じます。歯周病で炎症が起こっていると、アルツハイマー型認知症の引き金となるアミロイドβの産出と蓄積を加速させてしまうのです。これは九州大学の研究によるものです。