唾液の分泌に関係している自律神経

唾液の分泌には、自律神経が深く関係しています。自律神経には、活動的に整える交感神経、休息に向かわせる副交感神経の2系統があり、対照的な働きをしています。

ストレスや緊張などがあると、自律神経のうち交感神経が優位になります。すると、唾液の絶対量が減るだけでなく、舌下腺などからネバネバ唾液が分泌されるようになります。緊張すると、口のなかがネバネバした感覚があるのは、多くのネバネバ唾液が出ているためです。

リラックスしているとき、あるいは食事のときには、自律神経のうち副交感神経が優位となり、耳下腺などからサラサラ唾液が分泌されます。

サラサラ唾液もネバネバ唾液も必要ですが、なかでもサラサラ唾液をいつも多く出せることが健康増進のカギを握っています。

加齢に伴って唾液腺は萎縮する傾向にあり、サラサラ唾液の分泌は減少しやすくなります。

サラサラ唾液の分泌を促すには、ストレス解消を心がけて、副交感神経を活性化することが大切です。加えて、舌ストレッチにより、口内の唾液腺を満遍なく刺激すると、通常(約1.0~1.5L/日)よりはるかに多く(2~3L/日)の唾液が分泌されやすくなります。

一緒に食事を取る高齢夫婦
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サラサラ唾液にある「がんの抑制作用」

サラサラ唾液の効能として見逃せないのが、がんの抑制作用です。

日本人のがんの主因は、生活習慣とウイルス感染。この両者で、男性のがんの約43%、女性のがんの約25%が起こっていると推測されています(出典:国立がん研究センター「がん情報サービス」)。

このうち生活習慣でとくに問題なのは、食生活と喫煙。食品に含まれる各種の添加物、農薬、タバコの成分などには多くの発がん物質が含まれています。

これらが体内に入ると、有害な活性酸素が大量に発生します。活性酸素は細胞核で遺伝情報を伝えているDNAを傷つけてしまい、がんをはじめさまざまな生活習慣病を引き起こしたり、アレルギーや老化の原因となったりします。

しかし、サラサラ唾液中に含まれる酵素(ペルオキシダーゼ、カタラーゼなど)には発がん物質がつくる活性酸素を減少させる働きがあります。

1991年、同志社大学工学部の故・西岡一教授(当時)は、発がん物質が口のなかに入るとどうなるかを調べるため、各種の発がん物質に唾液を混ぜる実験を行いました。そして発がん物質の毒性は、唾液に30秒間つけておくだけでほとんど消失してしまうことを報告しました(日本咀嚼学会、1991、西岡一)。

西岡教授は、唾液による発がん物質の毒性を抑制する効果は、サラサラ唾液に含まれるペルオキシダーゼにあると分析しています。