18年間で保険適用は「たった6%」の先進医療

標準治療のほかに、がんの治療法には保険のきかない未承認治療も多く、そのひとつに「先進医療」というものがあります。

これはまだ、研究・臨床試験の段階にあるものですが、名前が「先進」なので、最先端のすぐれた治療法のように誤解されがちです。

しかし、安全性や有効性が実証されれば「標準治療」となり「保険適用」になるわけですが、毎年100種類以上の先進医療が国によって指定されているなかで、保険適用になったものは、1998年から2016年の18年間のあいだで6%しかありません。このことは、知っておいていただきたいと思います。

もうひとつ、「がんが良くなった」とか「がんが消えた」と宣伝されることが多い「代替医療」や「代替療法」ですが、代替療法には、公式な定義がありません。

大雑把にいってしまえば、健康食品、サプリメント、漢方薬、ヨガ、マッサージ、鍼灸、音楽療法、温泉療法などを総称したものを代替療法と呼んでいます。

「補完代替療法」と呼ばれることもありますが、厚生労働省の「がんの補完代替医療ガイドブック第3版」では、西洋医学を補ったり、代わりになったりするものとされています。

薬を飲もうとする人
写真=iStock.com/koumaru
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「がん治療に効果のない代替医療」が存在する理由

しかし、この代替療法には、残念ながら、がんを縮小させたり、がんの進行を抑えたりといった治療効果が認められるものは、現時点で1つもありません。

その反対に、ときには重い副作用をもたらしたり、予期せぬ治療の妨げになったりするものもあります。

アメリカでの大規模な調査結果によれば、標準治療のみを受けた患者さんに対して、代替治療のみを受けた患者さんは死亡リスクが2.5倍も高くなっています。

だからといって、代替療法はダメなのかというと、そうとも言い切れません。

代替療法にはがんを治癒する効果はありませんが、一部の代替療法には、患者さんのQOL(生活の質)を向上させる面があるからです。

がんを良くする、治す効果ではなく、QOLを改善させる効果を期待するのでしたら、代替療法をやっていいと思います。欧米の病院でも、音楽療法やヨガや鍼灸を取り入れているところがあります。

ただし、なにより肝心なのは、標準治療から代替医療のみに切り替えてしまわないことです。

代替医療に興味のある方は、まずは主治医や看護師などに相談してみてください。生活の質を保つことは、最も重要なことですから、臆せずに相談されることをお勧めします。

大切なことは、治療を続けながら、いかにがんとより良く共存していくかということになります。この「より良い」は、患者さんや患者さんを支えるご家族にとっての「より良い」です。治療にあたるのは医師だとしても、その医師が勝手に患者さんの「より良い」を決めることはできません。あくまでも患者さんが決めるものです。