ステージ4で全身に転移していても「末期がん」ではない

紋切型に「末期がん」と言われてしまいがちなステージ4や再発がんも、抗がん剤の進歩によって上手に共存しながら生きていけるようになっています。

私の患者さんで、乳がんが再発、転移した方がいらっしゃいますが、骨転移、リンパ節転移、肝臓転移と、全身に転移し、もう40年も抗がん剤治療を続けておられます。

ですから、ステージ4=末期がんではありません。

これは知っておいていただきたいと思います。ステージ4でも長生きして天寿をまっとうすることはできるのです。

そもそも、がんのステージは国際分類で決められており、7~8年に一度、見直しされます。医療の進歩によって予後がよくなると、ステージが変更になることがあります。

ステージ4といわれていたものがステージ3になる場合もある。

日進月歩が著しい医療の進化により、ステージ4の進行がんでも再発がんでも、自分らしく暮らしていくことが可能なのです。

患者と話をする医師
写真=iStock.com/kazuma seki
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抗がん剤には「やめ時」がある

ただ、抗がん剤について知っておいてほしいのは、過剰な抗がん剤の使用は避けたほうがいいということです。

なかには抗がん剤を使えば奇跡が起こって、進行がんが治癒するのではないかと考える方もいらっしゃいます。だから、どんなにつらくても我慢して、最後の最後まで抗がん剤を続けたいとおっしゃる場合も多いのですが、それは決して適切ではありません。

がん細胞は遺伝子変異を繰り返しますから、抗がん剤がだんだん効かなくなってくるのです。やりすぎはむしろ命を縮めることもあります。

抗がん剤はいちばん治療効果が高いものから使い、それをファーストラインといいますが、セカンドライン、サードラインと抗がん剤を替え、今はフォースラインぐらいまでで限界です。ですから、ある時点で、抗がん剤はやめるべきです。

こうした積極的な治療は、進行がんの場合は意外と早く終わってしまいますが、だからといって治療がなくなるとか、諦めるという意味ではありません。

そもそも、抗がん剤をやめたからといって、すぐにがんが悪化するものではありません。

むしろ、抗がん剤をやめることにより、体調がよくなり、がんの進行が落ち着くこともあります。