すべての発言が「名言」となる人物はいない。力のある言葉だけが歴史に残り引用される。

気軽に読める「名言集」は知的なライフハックか

なぜ今、名言が人気なのでしょうか? おそらく、あらゆる世代の人たちが幸せな未来像を明確に描くことができなくなっているという時代背景が影響しているのでしょう。政治は混迷を来し、経済の先行きは暗い。指針を示す存在だった親や教師、上司といった人たちも不安を抱き、迷っています。さらに、「自己責任」としての個の自立が求められる一方で、家庭や職場での人間関係は希薄になりつつある。信頼できる相談相手もいない――。

そんな中、先人たちの知恵の結集である名言を、自分を鼓舞するメッセージやアドバイスとして読みかえる人が増えているように思います。分厚く難解な古典を読むのは大変ですが、「名言集」ならパラパラと手軽に読み進むことが可能です。知的な「ライフハック」という側面も人気の背景にあるのでしょう。