にもかかわらず、なぜ「英語を聴き取れない」「話せない」のかといえば、理由はただひとつ。その訓練を受ける機会に恵まれてこなかったからです。

私も、かつては同じところにいました。学生のころは、教科書で文法を覚え、単語帳で単語を暗記するばかりで、生の英語を聴ける機会や話せる機会はほとんどありませんでした。

もしかすると、近頃は変わってきているのかもしれませんが、かつて日本の英語教育は文法学習に偏っており、会話の実践力を伸ばすようには組み立てられていなかったのです。

アプリとポットキャストが役に立つ

だとしたら、これからすべきことは明確でしょう。英語の実践力、特に学校では手薄だったリスニングとスピーキングの訓練を積む。まさに先ほど説明してきたステップを踏んで、英語の学び直しをしていけばいいと思います。

そこでひとつ問題となるのは、本書でおすすめしているPimsleurは基本的に、英語で外国語を学ぶためのアプリであるという点です。

英語の非ネイティブ向けには「韓国語で英語を学ぶ」「フランス語で英語を学ぶ」「スペイン語で英語を学ぶ」などのコースがあるのですが、なぜか「日本語で英語を学ぶ」コースはありません。

また、テキスト教材のAssimilはフランスの企業が作っている教材なので、実はフランス語で外国語を学ぶ教材が最も充実しています。英語で外国語を学ぶ教材もありますが、十数カ国語に留まります。こちらでもやはり、日本語で英語を学ぶ教材は作られていません。

というわけで、英語を習得するためにステップ①②を踏んでいくには、自分でちょうどいい言語学習アプリやテキスト教材を探す必要があります。

ネイティブの発音を真似るステップ①では、PodcastやYouTubeで「英語のネイティブのリアルな発音に触れられる+日本語の解説つき」のチャンネルを探すと、かなり学びやすいでしょう。

まずおすすめしたいのは、YouTubeチャンネル、ケンドラ・ランゲージ・スクールです。各言語で頻出フレーズを紹介している中でも、英語の動画は特に充実しています。初級から上級まで対応し、試験対策用の動画まで揃っています。

これに加え、おすすめのPodcastもいくつかご紹介します。(図表1参照)。

テキスト教材は、物語や会話文に文法解説が載っているという構成で、かつCDなど音声素材がついているものを探してみてください。私のおすすめは『ニューエクスプレス』シリーズです(一部、CD未付録の言語もあるようなので、購入する前に確認してください)。

これで、PimsleurとAssimilを使わなくても、ほぼ同じようにステップ①②のプロセスを踏んでいけるでしょう。

英語は「便利なツール」と考える

そしてもし、英語の学習を進めるうちに苦手意識や抵抗感が薄れ、徐々に実践力もついてきたと感じたら、ぜひ「英語で他言語を学ぶ」ということにも挑戦してほしいと思います。

なぜなら、英語そのものを学習するよりも、英語で他言語を学習したほうが、結果的に、他言語と一緒に英語も上達しやすいからです。

英語で他言語を学ぶには、英語による解説文を聴き取ったり読み取ったりする必要があります。たとえば「このスペイン語の文法は、どういうことだろう?」と思ったら、まず英語を理解しなくてはいけません。