発売初年度に100万本を突破

「どうせ売るなら、しっかり売ろう!」と、浅羽さんと友桝飲料は2005年3月に開催された食品・飲料展示会「フーデックス」に出展した。

八智代さんがデザインしたポップと、八智代さん考案のキャッチコピー「子どもだって、のまなきゃ、やってらんねーよ」で「怪しい感じ」に飾ったブースは、さぞ目立ったのだろう。初日、ハンズやソニープラザなど大手から中小まで、買い付け担当者が押し寄せた。これが縁となって百貨店のギフト商品としても扱われるようになり、7月には月産7.5万本に伸びる。

八智代さん(左)と浅羽さん
筆者撮影
妻の八智代さん(左)と浅羽さん。2人のアイデアとデザインがヒット商品を生み出してきた

そして8月、共同通信社の記事「ボクたちも乾杯!/人気広がる、こどもびいる」がヤフーに転載されると友桝飲料に注文が殺到し、年間100万本を突破。日経トレンディー誌の「2005年地方発ヒット商品」にも選出された。

当然、「製造本数分のラベルを販売」、要するに出来高制の契約を結んでいた浅羽さんのもとに多額のラベル代が振り込まれた。それを機に税理士から助言を受けて作った会社が「WILLOW(ウィロー)」だ。この時、八智代さんがデザイナーとして正式に参画した。

「最初は社名を『バリウム』にしようと思ってたんだけど、母ちゃんにそんな気持ちの悪い名前やめなさいと怒られてね。八智代に相談しようと思って電話したら名古屋にいて、美容院で髪を切っているところだったんですよ。それで八智代が美容師のお姉さんにその話をしたら、『名古屋だからウィローでいいんじゃない』と言われたから、そうしました(笑)」

独学でイラストやデザインを手掛ける妻・八智代さんの力

八智代さんに、ウィローを結成時のことを尋ねると、苦笑した。

「誘われたっていうかね、やるよな、みたいな感じやったけん。もうなし崩し的な(笑)」

もともともんじゃ焼き店のアルバイト仲間だったふたりのコンビが、この後、九州に名を轟かせるようになると想像した人はいただろうか?

「こどもびいる」の大ヒットを受けて、2006年春、友桝飲料とウィローに長崎市雲仙の酒店の店主から、「こどもびいるみたいな、オリジナルの商品を作りたい」という相談が舞い込む。浅羽さんと八智代さんは友桝飲料とともに、温泉と書いて「うんぜん」と読む「温泉レモネード(雲仙温泉レモネード)」を開発。

これが発端となり、地域に根差したオリジナル飲料の開発依頼が全国から相次ぎ、「指宿温泉サイダー」、「ゆふいんサイダー」など続々と新製品を生み出していった。浅羽さんが携わったご当地飲料は20種類以上に及び、今日もどこかで誰かが手に取っている。

指宿サイダー
写真提供=浅羽雄一
指宿温泉サイダー。鹿児島県初の地サイダーとして指宿に誕生した