岩手の先輩看護師は語る

「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」のひとこま。

大船渡高2年の金野史絵さん。小学生のときから看護師になりたかった。「看護師にも、いろんな看護師がいるんです」と教えてくれた中のひとつに、特定看護師という資格があった。

特定看護師とは「厚生労働省が創設を検討している、従来の看護師よりも幅広い医療行為ができる新しい資格のこと」(『知恵蔵2012』)。現在はまだ資格化されていない。受験資格として、看護師資格と実務経験以外に、大学院修士課程修了が義務づけられる模様だ。金野さんと同じ岩手出身で、現在は東京で働いている知人の看護師に訊いてみた。

「ひとことで言うと、お医者さんの代わりに、風邪薬ぐらいなら処方できるとか、ある程度の指示が出せるってことね。今はあらかじめ医師が事前に指示を出していて、看護師はその選択肢の中でやっているんだけど。大学院行くの? 大学院って、現場で使えない奴が行ってiPS細胞とか研究するところじゃないの(笑)? 給料増えるか? まだ始まってないからわからない。認定看護師はちょっと給料多いとは聞くけどね」

認定看護師は日本看護協会の資格だ。小児救急看護、新生児集中ケアなど21の専門分野があり、全国に1万1000人弱いる。さらにその上に、大学院修士課程修了を要する専門看護師という資格がある。こちらは全国で800人弱。また、日本看護協会には災害看護研修を受けた看護師が登録できる「災害支援ナース」という制度もある。よく勘違いされるのが「国際看護師」だ。現時点で世界共通の看護師や医師の国際免許はない。国際看護師は仕事の形態につく名称だ。そしてそれは、金野さんが目指す仕事であり、金野さんには、そのために進む学校も見え始めている。

「日本赤十字秋田看護大学を目指しています。将来海外でボランティアとして働きたいという夢に一番近づけると思ったからです。ここは海外研修の制度もあるし、赤十字で勤めていれば国際救援に参加できるので」

全国に6校ある赤十字看護大学は、東北では秋田にしかない(他は北海道、東京、愛知、広島、福岡)。日本赤十字秋田看護大学は、大船渡から約200キロメートル、車で3時間半の秋田市にある。1914(大正3)年、日本赤十字社秋田支部病院救護看護婦養成所として発足し、2009(平成21)年に大学となった。学部学生数447名。まだ卒業生はいない。オーストラリアや台湾の看護大学との交流プログラムがある。さて、金野さん、看護師の資格が取れたら、どこで働きたいですか。

「最終的には地元に帰ってきて働きたいけど、日赤に勤めて国際救援に参加したいという気持ちもあるし……。ボランティア活動的なかんじで、発展途上国に行って支援したいなと思ってます。 最終的には、拠点は大船渡で。 5年のうち1年はあっちで、また大船渡に戻って来て……そんなかんじでやりたいです」

金野さんや伊藤さんは「TOMODACHI~」に参加したことで海外志向が強くなった。一方で、郷土への思いを強めた高校生もいる。並の「地元志向」とはちょっと違う。郷土の「土」の字がよく似合う地元志向だ。