陸前高田のイチゴはおいしい

畠山皐さん(大船渡高校2年生)。

畠山皐(はたけやま・さつき)さんは大船渡高校2年生(理系クラス)。自宅は大船渡市の南隣、宮城県と境を接する陸前高田市の広田町にある。去年の3月11日、半島の町である広田町は津波で道を断ち切られ、しばらくの間「島」になった。「自宅は無事でしたが、自営業の父親の鉄工所が全壊しました」。お母さんは福祉施設で働き、八戸工業大学に通う兄がいる。畠山さんがこちらに教えてくれたものは「農業指導員」ということばだ。

「農業指導員になりたいです。農業指導員は県の職員です。大船渡市役所の災害復興の仕事をしている人の中にも、農業指導員の人がいます」

何をする仕事なんですか。

「たとえば、津波で海水がかかった畑を改良してトマトがつくれるようにしたりとか。わたしが住んでいる広田でも、いろんなかたちで農業を復興しようとしているんですけど、その指導や手伝いをする仕事です。最近は広田でも、塩害に負けない米づくりとかの研究も始まっているみたいです。広田も陸前高田も、おいしいもの多いんですよ。高田のアグリランドのイチゴはとても美味しいですよ(笑)。陸前高田市では色々な農業方法で復興しようとしています。もし良かったらぜひ陸前高田市のことを調べてみてください」

調べてみた。アグリランドとは「農業生産法人アグリランド高田」のことだ。2001(平成13)年に陸前高田のJAと市内農家2名が出資設立し、従業員を雇って運営している農業生産法人(有限会社)。農場は津波に呑まれたが、高台に新たな土地を借り、被災1カ月後には事業(イチゴのハウス栽培)を再開している。

調べてみると「農業指導員」は通称で、正式名称は「普及指導員」。農林水産省所管の国家資格だ。それまでの「改良普及員」と「専門技術員」を一元化し、2006(平成17)年に生まれた。自然相手の知識だけでなく、農家に対する経営指導も行う。ひとことで言えば、農業という事業のコンサルタントである。畠山さんが通う大船渡高は普通科だけの進学校だ。農業分野への進路は予想外だったので、訊いてみた。畠山さん、きっかけは何ですか。

(次回に続く)

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