10年間で20兆円発行する「GX経済移行債」

この「日本版・炭素税」とは、「GX賦課金」のことを指す。GX賦課金は昨年5月に制定されたGX推進法の中に盛り込まれたもので、再エネ賦課金と同様に「賦課金」という扱いとなっている。具体的には、2028年から「化石燃料の輸入業社などに対して、輸入する化石燃料に由来するCO2排出量に応じて賦課金を徴収する」という建付けだ。この際、徴収された賦課金は、「脱炭素成長型経済構造移行推進機構」(GX推進機構)が10年間で20兆円発行する「脱炭素成長型経済構造移行債」(GX経済移行債)の返済原資となることが予定されている。

この悪質性は、GX経済移行債はあくまでも政府とは異なるGX推進機構が発行するものであり国の借金ではないということ、そしてその原資となるGX賦課金は当然に税金として扱われないということだ。

しかし、実際には同法の制定はGX経済移行債20兆円分を埋めるための大増税が決定したことを意味する。当たり前であるが、化石燃料輸入事業者に課された賦課金は企業や一般国民に価格転嫁されることになるため、国民・企業の負担は確実に増加することになる。

曇天の国会議事堂
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実態が分かりにくい「隠れ増税」で国民の生活基盤を破壊

更に、GX推進法にはもう一つの大増税政策が仕掛けられている。それは電力会社に対する排出権の買取義務付けである。この買取義務付けは2030年代から運用開始が予定されている。2030年代は前述の再エネ賦課金の支払額がほぼ終わる時期だが、その代わりに電力会社に排出権買取を義務付けて、国民から電力料金を限界まで絞り取ろうとする強い意志を感じる(そして、もちろん電力会社による排出権の買取義務化も国民負担率には含まれないだろう)。

数年後から「隠れ増税」による大増税が、国会でろくに議論もないままほぼ全会一致で成立してしまっていることに戦慄せざるを得ない。エネルギー・電力という現代社会なら誰でも使用する対象に賦課金を課すことは逆進性の観点からも問題がある。これらの制度は貧しい人の家計負担を著しく増大させるとともに、企業に対するコスト増によってその脆弱な雇用を破壊する。政府は税金・社会保険料という名称ではなく、その実態が分かりにくい「隠れ増税」を推進し、国民の生活基盤を破壊しようとしているのだ。