そして07年9月、女性は満を持してAさんの成年後見人に。

「これでAさんの資産の管理権はすべてこの女性が握った。そのためAさんが自分の財産の状態を調べようと思っても調べられず、取り戻すこともできなくなった。被後見人は後見人相手に裁判などできないから、この件が法廷で追及されることはまずありません」

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任意後見人と違って、成年後見人は定期的に資産の状況を裁判所に報告しなければならない。しかしそれ以前の出来事については、裁判所は我関せず。“完全犯罪”成ったかに見えたが……。

「Aさんの意識が戻ってきたんです。女性に『通帳はどうなっているのか』などと問い質したが、『大丈夫』と言うばかりで隠したまま。Aさんは不信感を抱いて、病院に自分の姪を探してもらうよう要請した」(同)

“Aさんには身寄りがない”と説明するこの母娘を不審がっていた病院の協力も得て、時間はかかったが姪と連絡を取ることに成功、病院も母娘との面会を拒否した。母娘側も負けじと、「病院がAさんを軟禁している」と人身保護請求をかけてきたが、08年10月、Aさん側は裁判所に、財産の横領を理由に後見人解任の申し立てを行った。

「刑事事件になる話だから解任、場合によっては業務上横領まで問うつもりでしたが、裁判所は『面倒だからイヤ』という物腰。結局、女性が解任を恐れてみずから辞任する形となった」(同)

Aさん本人が法廷で「もう彼女らとは会いたくない」と訴えたことで人身保護請求は却下された。財産の管理権を取り戻したAさん側は、今度は母娘に対し離縁の訴え。Aさんが亡くなった際、残りの財産を母娘の手に渡さぬためだ。加えて、奪われた不動産の登記移転の請求、Aさんの資産管理会社社長となっていた女性の辞任を求める株主代表訴訟(Aさんが100%株主)の計3つの訴訟を起こしたのだが……。