「離縁の第1審は敗訴。離縁は、最近は破綻していれば別れられる(破綻主義)離婚とは違って、相手がやらかしたことを立証する必要がある(有責主義)。しかし、養子縁組以降のAさんの記憶は、いうまでもなく曖昧。かすかにどこかの法律事務所に連れていかれた記憶があるだけです。逆に、向こう側はいくらでも証拠を出してくる。贈与の契約書や、名義書き換えの際に司法書士が立ち会ってサインしている写真まで撮ってあった」(同)

すぐに控訴したものの、結局、「離縁はするが、過去の2億円についてはこれ以上返せとは言わない」という条件で和解することに。母娘がまだ気付いていなかった残り数千万円の資産も、裁判中にAさんが亡くなれば母娘の手に渡る。苦渋の決断だった。

こうしたケースは、あらかじめ親との間で先の任意後見契約を結ぶことが武器となるが、心理的な抵抗も大きいうえに必ずしも万能ではないという。

「預貯金8000万円は娘の留学費用。月々200万円近いマンションの家賃収入で、今ごろこの母娘は悠々自適でしょうね」――この弁護士でなくとも、恐怖と怒りを覚えるのは当然だ。

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