自分に自信が持てないとき、どうすればいいか。元JRA騎手で調教師の福永祐一さんは「度が過ぎた謙虚は弱気を招く。『自分ならやれる』と思い込めば人は変われる」という――。

※本稿は、福永祐一『俯瞰する力 自分と向き合い進化し続けた27年間の記録』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

福永祐一
写真=時事通信フォト
第69回安田記念(GI)を制し、インディチャンプの馬上で笑顔を見せる福永祐一騎手(中央)=2019年6月2日、東京競馬場

“絶対王者”武豊を前にあきらめムードだった

2010年は、精神的にも自分を追い込んだ年だった。謙虚であることを美徳とする日本ならではの風潮に、あえて逆らうことにしたのだ。

2010年3月27日、毎日杯の最後の直線で(武)豊さんが落馬。鎖骨や腰椎などを骨折する大ケガを負った。そこからたった4カ月で復帰するという離れ業を見せたのだが、そこはたかが4カ月、されど4カ月。リーディングの順位に影響するには十分な時間だった。

ちなみに、1988年から前年の2009年まで、豊さんが長期でフランス遠征を敢行した2001年を除き、関西リーディングは豊さんの不動の指定席。2010年も落馬があるまでは当然のようにトップに君臨し、終わる気配のない全盛期に周囲があきらめムードだった時期だ。

同年の8月15日、自分はメリッサで北九州記念を勝利。確かその直後だったと記憶しているが、友人の市川海老蔵(現・團十郎)と伊藤英明に都内で会う機会があった。北九州記念の祝いの言葉もそこそこに、二人が自分に向けてきたのは「お前、なにやってるんだよ!」という叱咤しった