長期金利1%で日銀と日本の金融システムは崖っぷち

今回の政策決定会合での微調整でさえ国債売りは優勢となり、長期金利(10年債金利)は一時上昇。11月1日には0.97%をつけた。10年5カ月ぶりの高水準だ。いよいよ金利1.0%に迫ってきた。

【図表】10年債金利
筆者作成

長期金利が1.0%になると、日銀や日本の金融システムはどうなるのか。金利上昇は債券価格の下落を意味する。つまり様々な金融機関の保有債券評価額(評価損、いわゆる含み損)が拡大することになる。

その額はどのくらいになるかを検討してみよう。参考になるのは2022年9月末(長期金利0.25%)と12月末(長期金利0.5%)時点の評価損の増加具合である。

長期金利が0.25%上昇したことにより、地方銀行全体の債券評価損は2倍(1.6兆円)に増えた。生保主要15社は約5兆円5600億円の評価益が約3600億円の評価損となった。5.9兆円の評価額の減少だ。一方の日本銀行は、評価損が8849億円から8兆8000億円に拡大した。評価損が7.9兆円増えたのだ。

長期金利が0.5%から1.0%に上昇した場合、大雑把に言えば、上記の評価損が2倍になる。地銀は評価損3.2兆円、生保主要15社の評価損は12.1兆円、日本銀行は24.6兆円の評価損となる。単純計算であり正確性は欠けるものの、巨額であることに変わりない。日本の2023年度の税収予想額70.3兆円と比べれば、尋常ならぬ額である。

米国のように長期金利4%後半にもなれば、腰を抜かさんばかりの評価損になってしまう。日銀や金融機関はたちまち債務超過になる。

金利が上がれば、どんどん債務超過になる

債務超過になると何が怖いのか。時価会計ベースで「債務超過になる」とは資産、負債両サイドを現時点で現金化した場合、借金等の負債を全部返済するのには現金が不足するということ。民間銀行だと「取り付け騒ぎ」のリスクが生じる。

預金者は、銀行が(資産を売却して)調達した現金が枯渇する前に、自分の預金を引き落とそうとするからだ。最近では米国のSVB(シリコンバレーバンク)での資金流出劇が記憶に新しい。

債務超過が怖いのは、なにも銀行だけではない。企業でも債務超過になれば、同じ現象が起きる。お金を貸している銀行や関係企業、社債を買っている(=貸金をしている)人たちが、資金が枯渇する前に回収を図る。その結果、企業は資金繰倒産をしてしまう。

よく「債券は満期になれば元本がきちんと返ってくるから問題ない」と主張する人がいるが、債権者は債券の満期までその企業からの資金回収を待ってくれない。リーマンその他多くの企業がこのケースで資金繰り倒産している。