安倍派幹部たちの答弁は食い違いばかり
自民党の裏金事件をめぐり、疑惑を抱かれた政治家が自ら釈明する場である衆院の政治倫理審査会(政倫審)が15年ぶりに開かれた。岸田文雄首相が誰からも求められていないのに名乗り出て、歴代首相として初めて出席したことで注目を集めたが、岸田首相が安倍派の裏金作りの経緯を知る由もなく、予算委員会と同じように表面をなぞる答弁を繰り返すだけだった。肝心の安倍派幹部たちの答弁は食い違い、疑惑は深まるばかりだ。
特に焦点となったのは、安倍晋三元首相が派閥会長として復帰した後、2022年4月に政治資金パーティー券の販売ノルマ超過分について長年続いてきたキックバックの廃止を提案した後の経緯だった。事務総長だった西村康稔氏ら幹部が協議して一度はキックバック廃止を決定し、派閥所属議員に通知したものの、安倍氏が同年7月の銃撃事件で急逝した後、キックバックは一転して継続されたのだ。
西村氏ら安倍派幹部は裏金づくりには一切関与していないと繰り返し、会計責任者の元事務局長とすでに他界している派閥会長(安倍氏や細田博之前衆院議長ら)に全責任を転嫁してきたが、実は西村氏らが深く関与していたことを疑わせる重大な事象である。
誰が、いつキックバックを継続したのか不明のまま
西村氏は政倫審で、同年8月に塩谷立、下村博文、世耕弘成の派閥幹部3人とキックバック継続について協議したことを認めたものの、その場では結論に至らなかったと証言。自らは同月の内閣改造で経産相として入閣して事務総長を外れ、その後の経緯は承知していないと弁明した。
これに対し、西村氏から事務総長を受け継いだ高木毅氏は、自身は8月の幹部協議に参加しておらず、同年11月になって事務局からキックバック継続の話を初めて聞いたと証言。「執行部的な方々で決めて、そのうちそういった皆様方で元に戻したというように思っている」とあいまいな説明を繰り返した。
座長だった塩谷氏も8月の幹部協議について「当時は(キックバックが廃止されると)困る人がたくさんいるから継続でしょうがないかなという、そのぐらいの話し合いの中で継続になったと理解している」と、煮え切らない説明に終始した。
安倍氏の提案を受けて一度は幹部協議で正式決定したキックバックの廃止を、派閥職員である事務局長の一存で覆すことはあり得ない。西村、高木、塩谷3氏が真実を隠しているか、誰かがウソをついているという疑念が膨らむものの、キックバック継続が誰の責任でいつ決定したのかは依然として闇の中だ。