自分の方が上回っていた収入が逆転
結婚前から「女性は何かしらの形で社会と繫がるべきだと強く思っていた」という内田さんにとって、結婚後の夫婦共働きはごく自然で、当然の選択だった。当時、内田さんは公務員で、妻は企業勤めの身。収入は内田さんが上回っており、一家を支えているという自負もあった。
自分が大黒柱という感じでしょうかね。自分がやっぱメインで、妻は所得的にサブという感覚はありました。妻も所得はありましたが、どっちが主でどっちが従という関係では、主は明らかに私でした。例えば、海外旅行代などは、ボーナスなどを使って全部私が出していました。食わせてやっているっていうことではないんですが、主従の意識はありましたね。
ところが数年後、その主従関係が逆転する。妻の収入が内田さんを上回るようになったのだ。資格を活用し、顧客を特定の業種に絞ったビジネスが軌道に乗り始め、新聞やテレビ、雑誌などメディアでの露出が急増した。著書も相次いで出版した。内田さんは当時、民間企業に転職したばかりの頃で、求められるスキルの違いに難渋し、苦戦していた。
まったく異なる職種に転職しているので、スキルが圧倒的に足りませんでした。転職してから二年半もの期間、仕事でのパフォーマンスが上げられず、完全に立ち上げに失敗しました。その間、妻は一気に「わっ」と来たんです。
「自分の稼ぎがなくても家計が回る」複雑な心境
共働き夫婦で、どちらかの仕事がうまく回り始めた一方、片方のパートナーが対照的な局面を迎えたとき、夫婦間で何らかの化学変化が起こるのだろうか。まして、男性が優位に立つ日本社会で、妻ではなく夫が収入で劣るような形になると、どうなるのだろうか。
客観的に申し上げると、経済的地位、経済的な所得という意味では、向こう(妻)のほうがはるかに多いわけですよね。これは、もう間違いありません。私の倍以上稼いでいるわけです。私の稼ぎなんかなくても、ウチの家計は十分に回っていくんです。
まあ今でこそ、社会的地位という意味では、私の仕事が特殊なこともあって、夫婦間ではそんなに差がないという風に認識されていると思います。そうした状況ではありますが、転職してスタートダッシュがあまりうまくいかなかった時期に、彼女のほうがはるかに社会的にうまくいっていた時期は、素直に複雑な心境がありましたね。