「具体⇔抽象思考」で「物事をわかりやすく伝えられる人」になる

「解像度の高い人」のもう一つの特徴が「物事をわかりやすく伝えられる」です。この状態になるためには、どうしたらいいのでしょうか。それが、「『具体⇔抽象思考力』を鍛える」になります。

なぜでしょうか? 「具体⇔抽象思考」という言葉は、元もと一般用語にはない一種の“造語”ですから、まずはその意味するところを定義しておく必要があります。

「具体⇔抽象思考」とは、先ほどお見せしてきたようなピラミッドを上に行ったり、下に行ったりして、「具体」と「抽象」を行き来することです。

先ほどの「抽象化思考」で登場したピラミッドを思い出してください。頂点が最も抽象的な抽象度100%」、底辺が最も具体的な「具体度100%」となっています。

「具体化思考」は、このピラミッドの底辺に向かって掘り下げていく思考であり、「抽象化思考」は、ピラミッドの頂点に向かって組み上げていく思考だと申し上げました。

それに対して、「具体⇔抽象思考」とは、この頂点と底辺の間を行き来する思考のことを意味します。

言うまでもなく、「具体⇔抽象思考」ができる人というのは、「具体化思考」と「抽象化思考」のどちらも使いこなせている人に限られます。

従って、誰にでもすぐにできるというものではありません。トレーニングを十分に積んだ方であれば、習得することは決して難しくはありません。

相手の「具体⇔抽象レベル」に合わせて話すのがポイント

既にここまでで、「具体」「抽象」とはそれぞれどういうものか? については皆さんも理解されているはずです。人は、誰もが同じ世界を見ているわけではありません。むしろ、一人ひとりがそれぞれ違う世界を見ていると言ってもいい。

見ている世界の違いは、すなわち「具体⇔抽象レベル」の違いです。とはいえ、世の中は「具体度100%の世界」や「抽象度100%の世界」に生きている人ばかりではないので、「具体寄り」「抽象寄り」の最適な階層に合わせて話をすることになるでしょう。

相手の「具体⇔抽象レベル」に合わない話をした場合、たとえ何一つ間違ったことは言っていなくても、あなたの意図は相手に伝わりません。それも、誤解されるというレベルではなく、場合によっては根本から全く理解されないことになります。

コミュニケーションがうまくいかない場合、原因を「伝え方」「言い方」の問題と捉えて、いわゆる「話し方教室」などで学ぼうとする人がいます。しかし、残念ながら、たいていの教室ではあなたの悩みは解決しません。

ビジネスミーティングで文書を提示するビジネスマン
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