誰に対しても平等かつ公平に接する

今回のオリンピック最終予定において、彼女たちにとっての負けられない一戦は、初戦のベトナム戦だった。各グループ1位の座は順当にAランクのチームが持っていく。残された枠は一つ。すべてのグループ2位のうち、勝ち点差や得失点差などで上位1チームに入れば最終予選に進むことができる。

普通に考えればベトナム優勢であることは疑いようもない。それでも、ウズベキスタンは前半につかんだ1点を守り抜き、接戦を制した。その後、実現した日本戦では、日本が最終予選を優位に進めるため大量ゴールを奪わないという選択をしたことで、後味の悪い試合になってしまったが、ウズベキスタンは晴れて過去最高成績のグループ2位となり、最終予選進出を決めた。

就任からわずか2年でここまで押し上げた本田氏の手腕を、代表チーム部長ウスマン・トシェフ氏はこう評価する。

「本田さんの力なら、この(短い)期間で結果を出すには十分だったのではないでしょうか。トレーニングプロセスからそこに臨む選手の態度、規律に至るまで、すべてに変化がありました。彼女の素晴らしいところは誰に対しても平等かつ公平に接するところ。これはチームを作る上でとても大切なことです」

ウズベキスタン中を視察し、原石を探した。70名を超える選手を試し、何とか土台を担えるよう、その原石を磨き続けた2年間だった。

「お国柄でしょうかね、選手たちは本当にポジティブ! 調子に乗るとどこまででも行けそうな空気感になりますが、立て続けに失点すると心が折れるのも速い(苦笑)。ウズベキスタンは中央アジアに位置します。ロシア系、韓国系、中国系、トルコ系……いろんな民族が集まっているのでフィジカル面でもいろんな特長が見られて面白い。そこは日本とは違う魅力の一つですね」

いろいろな民族が集まった混成チーム。日本チームとは違う魅力の一つだ。
撮影=早草紀子
いろいろな民族が集まった混成チーム。日本チームとは違う魅力の一つだ。

0から1を生み出す。とてつもないパワーを要する作業を、何度でもチャレンジする本田氏。

「別にそれが好きってわけじゃない! 好きなところで強化合宿ができて、どんな選手でも呼んでいい……そんな環境でチーム作りしてみたいですよ(笑)。でも結局気づくと“途上”な環境に身を置いているんですよね。自分の年齢を考えて振り返ってみると、結局はそういうこと(好き)なんでしょうね(笑)」