執行英三(日本競輪学校教官主任)
競輪選手を目指す選手たちは必ず、日本競輪学校で1年間、修行のごとき厳しい生活を積まなければならない。この夏、48年ぶりに復活した女子競輪の「ガールズケイリン」の卵たちもそうだ。
女子二期生は19人。競輪学校の指導歴14年目を数える教官主任の執行英三は言う。
「ほんと、強くなってほしい。みんな、よーく頑張っているナと思います。でも、もっと脚力をあげてもらわないとダメですね」
競輪学校47期卒業。17年間、プロ競輪選手としてレースを走った。38歳で引退した。結局、最高クラスのS1にはなれなかった。S1選手が競輪の選手だと思っている執行にとって、自身の現役生活は「中途半端」に映っている。だから、生徒たちにはS1まで上がってほしい。強くなってほしい。
競輪選手にとって技術や体力は大事だけれど、なんといっても競輪に打ち込む姿勢こそが肝要だと信じている。時には、生徒にカミナリを落とす。1男1女を持つ52歳。我が子と同じような愛情を持って生徒たちと接するのである。
11月某日。甘さが覗く生徒たちに言った。「プロになるんだという自覚を持て。来年の春にはデビューして、お客さんの前でおカネを賭けられるのだぞ」と。
とくに素質に恵まれた若者の覇気のなさが気にかかる。むしろ自転車経験のない、年上の生徒たちががんばっている。例えば、女子二期生の最年長、35歳の猪頭香緒里(いとう・かおり)。毎日、朝5時から自主トレーニングに励んでいる。
「もう年寄りで、自転車に乗ってなかった人のほうががんばっているわけだ。あの年齢でいろんなものを捨てて、学校にきている。では、若い人たちはどうなのだ」
自転車経験を積んできた若者たちを叱咤する。「目先にこだわらず、もっと大きく生きろ。年寄りに負けちゃダメだ」と。
「"自転車に飽きたの?"って聞きたい。飽きていたら困るのです。これから自転車で仕事するんだから。飽きてちゃ話にならない。若い人はもっとがんばらないといけない」
頑固一徹。熱血教官はとくに若者たちに奮起を促すのである。