「医師の働き方」3つの方法

「医師の働き方改革」そして「長時間労働軽減」を実現するには、大まかに3つの方法がある。「働く人を増やす」「仕事を減らす」「効率化する」である。順番にその現状と課題を示していこう。

(1)「働く人を増やす」の現状と課題

医学部の定員は厚生労働省および文部科学省によって厳格に定められているが、地方の医師不足対策として、入学定員は7625人(2007年度)から徐々に増えてゆき、2017年度からは9400人前後で推移している。確かに医療現場には若手医師が増えてきているが、それも限界がある。

他国のように外国人医師を投入する方法もある。日本の医師免許取得には日本国籍は条件に含まれず、海外医大出身者の医師国家試験受験も認められている。しかし、試験そのものは日本語で行われる。さらに、「産褥期子癇さんじょくきしかん」「尋常性天疱瘡じんじょうせいてんぽうそう」などの医学用語をスラスラ読み理解できるだけの日本語能力が必須であり、外国人には高いハードルとなる。それが「外国人医師を“輸入”の障壁」となっている。

欧米で医師の過労死ニュースを見かけないのは、人材不足部門への補充がしやすいという面も大きいが、これを日本が簡単にマネすることはできない。よって、医学部定員増加や外国人医師輸入など、医師数増加による「働き方改革」には限界があるだろう。

(2)「仕事を減らす」の現状と課題

厚労省が「働き方改革」の柱にしているのが、「医師に集中している業務の一部を看護師などに移したり・共同実施したりする」であり、それぞれタスクシフト・タスクシェアと呼んでいる。

とりわけ「特定行為研修」と呼ばれる高度な研修を修了した看護師を2025年までに10万人以上養成し、医師業務の一部を移管する計画だったのだが、2022年3月までの「特定行為研修」の修了者は約4800人と報告されており、当初の見込みを大きく下回っている。端的に言って、「看護師の待遇で医師の仕事をやらせる」ための研修を、積極的に受けたいと思う看護師は少なかったのだろう。

また2024年1月「三重県松阪市は、救急車で搬送されても入院に至らなかった場合、7700円を徴収する」と発表した。松阪市の担当者は「救急車の出動件数がこれ以上増えると限界を超え、助かるはずの命が助からなくなってしまいます」と説明しているが、今後もさまざまな形での時間外受診の抑制策が増えると予想される。

疲弊した医師
写真=iStock.com/Casarsa
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