もともとは「維新vs非維新」の構図だった

この市長選の「陰の主役」は、野党第2党の日本維新の会だ。

京都は2021年の前回衆院選以降、メディアなどで盛り上がった「立憲vs維新の野党第1党争い」における最大の戦場と化している。隣の大阪府で圧倒的な勢力を誇る維新は、かねて京都に勢力を広げることに執念を燃やしていた。

地理的な側面もあるが、京都は立憲の泉健太代表や福山哲郎元幹事長など同党の有力者が多い。維新としてはここで勝って立憲に打撃を与え、最近停滞気味の維新への関心を再び高めたい思惑もあっただろう。維新の目下の大目標は「立憲から野党第1党の座を奪う」ことなのだから、京都重視は当然の戦術と言える。

一方の立憲は、野党第1党として自民党と政権を争うためにも、維新の伸長を何としても止めたい。党首の地元であり、維新の本拠地に隣接する京都を、間違っても落とすわけにはいかないのだ。

立憲は「非維新」を大義名分とした国政与野党の「共闘」に走った。擁立したのは、かつて民主党の同僚議員だった松井氏だ。だが自民、立憲の両党からは「与野党相乗り」を嫌う造反も出て、松井陣営の足元は揺らいだ。

維新は元市議の村山氏を擁立し、さらに国民民主党の京都府連や、同党を離党した京都の実力者、前原誠司氏の新党「教育無償化を実現する会」も推薦の方針を決定。結果として維新は旧民主系を「割る」ことに成功した。

こうして京都市長選は「維新vs非維新」という緊張感のある構図が生まれた。「維新の京都進出なるか」が、事実上の選挙戦の争点だった。

「与野党相乗り」の候補が取り残された

ところが、この構図が選挙戦直前に突然崩れた。

維新が担いだ村山氏に、政治資金パーティー券を販売しながら実際には参加者がいなかった、という疑惑が浮上。維新など各党は、選挙の告示8日前(1月13日)というタイミングで、村山氏の推薦取り消しに追い込まれた。政党の支援を失った村山氏は、立候補はしたものの主要候補からこぼれ落ちた。選挙戦最大の争点とみられた「維新の京都進出」は、告示を目前にして、突然消滅した。

京都市民から見ると、有力な「非自民」候補が失われ「与野党相乗り」の候補が取り残されたことになる。これでは選択肢がない。こうした中で突然、有力な対立候補として急浮上したのが、共産党が自主支援した福山氏だ。前回の市長選にも立候補し、知名度もあった。

福山氏は選挙戦に入ると、松井氏と「横一線」と評されるデッドヒートを展開。敗れたとはいえ、松井氏に約1万6000票差に迫る善戦だった。出口調査によれば、福山氏は共産支持層のみならず、立憲や維新、果ては自民支持層の一部にも食い込み、無党派層では松井氏を上回っていたという。

これが京都市長選のおおまかな流れだが、なぜ立憲が「ポイントを稼いだ」ことになるのか。