我が国の教育議論が抱える根本的な問題

また、某医学部の入学試験における男女の成績の下駄で不平等があったと大荒れしていましたが、男の子を育てる側の問題というのは確かにあります。というのも、18歳ごろにはほとんどの女の子が精神的に成熟し、学問を修め成績を取る能力が男の子より高いのに対し、男の子は晩成でゆっくり精神的に成熟する子は中学受験どころか大学受験においても割と不利を蒙ることが分かっているのです。

言い換えれば、子どもの頃は何かが遅れてるんじゃないかと思うような物分かりが悪くて粗野な子が、成人式でも大暴れするなどいかれた行動を繰り返していたのに、24歳ぐらいから突然成熟し、結婚出産を機に真面目に働き始めたり大学に通い始めたりする現象があります。いままでは「あいつも身が固まったか」と判断されていたものは、おそらく精神や知能の成熟にあっては晩成型の人物だったのであって、青春時代のやらかしを甘酸っぱい黒歴史として胸にしまいながら生きていくことになるのです。

そもそも日本社会では、なぜか若い理系人材のトップ層はこぞって医学部を目指して医者になろうと頑張る不思議があります。それもこれも、国家資格である医者になってしまえば平均年収も高くて喰いっぱぐれもなく、社会から尊敬される仕事に就けると「親が」思っているからです。

しかしながら、医師という仕事は2040年に高齢者人口が減少に転じると、一気に医師余りの時代に突入してしまうことが確実視されており、2024年のいま中学受験に成功して医学部を目指すんだという家庭は、2030年に医学部に入学して6年後医師資格を取り研修期間を終え専門医として一線で働き始めるころには医師需要がどんどん減っていく局面に入ることを忘れています。医学部をトップとする学歴社会なのに、学歴の向こう側に働く人間としてのキャリアやロールモデルがあまり議論されないのが我が国の教育議論が抱える根本的な問題なのではないかといつも思います。