少子化を止めるにはどうすればいいのか。立命館大学の筒井淳也教授は「少子化の根本的な原因は未婚化にあるので、子育て支援は少子化対策にはならない。子供を育てやすい社会を目指すのではなく、若者が結婚しやすい社会を目指すべきだ」という――。

※本稿は、筒井淳也『未婚と少子化 この国で子どもを産みにくい理由』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

赤ちゃんが大人の指を握るイメージ
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです

「子育て支援」は少子化対策になるのか

2023年4月1日に発足した「こども家庭庁」だが、設立に向けた直接の発端は2021年、菅義偉すがよしひで政権下で「こども庁」の設立が検討されたことであった。その後、名称として「こども家庭庁」が提案され、2022年6月に国会で設立が可決された。以降、こども家庭庁が少子化対策の「司令塔」として位置づけられることになった。

新たな体制では、これまでの「少子化社会対策大綱」「子供・若者育成支援推進大綱」および「子供の貧困対策に関する大綱」の三つの大綱は、「こども大綱」として一つに束ねられることになった。こうなると、有識者が中心となって少子化対策の柱としてこれまで提案されてきた若者、あるいは独身者への支援が後景に退いてしまうのでは、という心配をしたくなる。こうなってしまうと、少子化対策は後退してしまう可能性さえある。

当然と言えば当然だが、結婚し、子どもを産み育てるのは大人である。生まれた子どもを支援することはたしかに間接的には子育てをする大人を支援することにもつながるが、特にまだ子どもをもっていない独身期の生活支援などについては、両者は重なるところが小さい。

考えてみてほしい。「児童手当を拡充します」と政府が発表したとき、結婚に踏み出せない若者が「じゃあ誰かと出会って結婚できる!」と考えるのかと言えば、多くの場合そうはならない。こども家庭庁のスローガンは「こどもまんなか社会」である。しかし、そもそも子どもを大事にすることと少子化対策は、関連はするがイコールではないことを忘れるべきではない。