※本稿は、小泉健一『今さらだけど、アドラー心理学を実践してみたらすごかった』(大和出版)の一部を再編集したものです。
人間関係に役立つ理論
アドラー心理学の理論の中で、人間関係でとても役に立ったものが「認知論」です。
これは「人それぞれが自分の色眼鏡を通して物事を見ている」という考え方です。
「別の人に言われると腹が立たないのに、なんかこの人に言われると腹立つんだよなぁ」という経験がないでしょうか。私はあります……。
こう感じるのは自分の認知によるものです。
その人自身を「嫌な人」と思っているから、そのフィルターを通して、言動までもが嫌だと思えてしまうのです。
夫婦生活でも、新婚のときはパートナーが家事をしないということが気にならなかったのに、「家事をしないなんて許せない!」と考えが変わった人もいるのではないでしょうか。
事実は同じなのに、なぜ解釈が変わるのか。
それは自分の認知が変わっているからです。
大事なのは、事実と感情を切り分けて考えることです。
例えば、「何回も遅刻してくる友人にイライラしている」という体験があったとします。これを「事実」と「感情」にわけてみます。
感情は自分で選ぶことができる
【事実】友人が待ち合わせに遅れて来る。
【感情】「1回だけでなく、何回も遅刻して私を待たせて、なんとも思わないのか?(=もっと私のことを大切にしてほしい)」
このように、「友人が待ち合わせに遅れて来る」という事実に対して「私をもっと大切にしてほしい」という感情を自分で生み出しているのです。
アドラーは「感情も自分で決めることができる」と言っていますので、この感情も自分の認知次第では変えることができます。
事実と感情を切り離さずに、「何回遅刻してるんだよ! 悪いと思っていないのか⁉」と感情を優先して責めたり、言い合いになってしまうと、人間関係は悪化します。
また、自分が我慢し続けるのもメンタルの健康にはよくありません。
事実と感情を切り離したうえで、「遅刻されると、私も待つ時間がもったいないから、時間通りに来てほしいな」と、「私はこう思う」と伝えると、人間関係も良好になっていきます。
イライラしてしまったときに、冷静に考えるのは難しいかもしれません。
でも感情的になっているときはうまくいくことが少ないので、少しぐっとこらえて、時間を置いてから気持ちを整理するようにしましょう。