キャンペーン後も売り上げ増が継続

1つ目は、デジタルサイネージと連動させることで、「キャンペーン後も継続して売り上げ増の効果が認められた」ことだ。

通常のキャンペーンだと、期間中は対象商品の売り上げが増加しても、キャンペーン終了とほぼ同時に、売り上げがキャンペーン実施前の水準に戻ってしまったり、下回ってしまったりすることが珍しくない。しかし、今回、キャンペーン終了後2週間を経過した時点でも、デジタルサイネージ未設置店に比べて設置店のほうが、ジョージアの販売本数は約9%高かった。しかもその購入者のうち6割以上が、キャンペーン期間中に1回以上ジョージアを購入していたという。

ファミリーマート デジタル・金融事業本部 デジタル事業部長の国立冬樹氏は、「デジタルサイネージをうまく使えば、キャンペーン期間中に動画を配信しているときはもちろん、その後も継続して商品を顧客に購買してもらえる可能性が高いことを示せた」と話す。

デジタルサイネージに配信されたコーヒー「ジョージア」の動画。「シズル感」たっぷりの動画で、視聴した顧客の多くに「飲みたい」と感じさせた
デジタルサイネージに配信されたコーヒー「ジョージア」の動画。「シズル感」たっぷりの動画で、視聴した顧客の多くに「飲みたい」と感じさせた(出典=『小売り広告の新市場 リテールメディア』)

動画によって「パイ(=市場)」全体が膨らむ

得られた別の効果の2つ目は、タッチポイントを連動させたキャンペーンを展開することで、対象商品だけでなく、「対象商品を含むカテゴリー全体の売り上げも増えた」ことだ。今回のキャンペーン期間中、ファミマ全店におけるコーヒーカテゴリー全体の売り上げは、前年同期比で17%増えたのだ。市場が停滞気味のコーヒーカテゴリーにかかわるメーカーや店にとって、カテゴリー全体の拡大は朗報だろう。

速水氏は「『ジョージア』をおいしそうに飲む動画をデジタルサイネージで見たことで、コーヒーを飲みたいと感じ、購買した顧客が多かったのだと思う。動画を見せることで、対象商品を含む『パイ(=市場)』全体を膨らます可能性のあることが分かった」と言う。今後は、対象商品の売り上げを特に伸ばしつつ、その商品を含むカテゴリー全体の底上げを図るような施策を模索するという。

得られた別の効果の3つ目は、「新規顧客の獲得」だ。今回のキャンペーン期間中にジョージアを購買した顧客の約50%が、「これまで『ジョージア』を購買したことのない新規顧客だった」(速水氏)という。

メーカーにとって、顧客を絞って広告を配信し、態度変容を促す施策は、費用対効果が高いとされる。だが、やり過ぎると同一の人に類似の広告が次々と配信され、メーカーの思惑とは逆の効果をもたらしかねない。そうならないためにも、メーカーにとって新規顧客の獲得は大きな課題である。今回のキャンペーンは、店頭の販促施策とデジタルサイネージを連動させることで、「新規顧客までも獲得できる可能性が高いことを示せた」(速水氏)のである。