もし見つけてしまったらどうすればいいか

【深津】日本でも戦前はそこらじゅうにトコジラミやシラミがいて、当時の人は「そんなものだ」と思って生きていたんだと思います。戦後、強力な殺虫剤の普及と衛生状況の向上によって、1960年代にはシラミやトコジラミは日本ではほぼ駆逐されました。

ただ、そのような駆除を繰り返し生き延びたトコジラミが子孫を残し、殺虫剤への抵抗性を進化させ、おそらくは国際的な人の往来や物流にともなって海外から再導入され、ふつうの薬剤が効かない「スーパートコジラミ」が再び蔓延するようになったというのが現状でしょう。

研究所で飼育しているトコジラミ。黒い点のようなものが血糞
撮影=プレジデントオンライン編集部
研究所で飼育しているトコジラミ。黒い点のようなものが血糞

もっとも、今なぜトコジラミがこんなに大きな話題になっているのでしょうか。トコジラミは本当に最近になって急増したのでしょうか。私はもしかしたら、実はもっと前からある程度蔓延していたのが、SNS上におけるショッキングな話題として情報が拡散し、一気に増幅しただけなのではないかと、ちょっと疑っています。

トコジラミはどうしたら防げるかという話で、よくネット上などで流布している方法として、「ホテルや家に入ったらまず荷物は浴槽などに入れて、トコジラミの侵入を防ぐ」とか言われていますが、現実的に日常生活の中でいつも実践できるかといったら、難しいですよね。

トコジラミは熱に弱いと言われていますが、家具や部屋の隙間をくまなく高温処理するなんて、特殊な器具を有する専門業者でもないとできません。いま蔓延しているトコジラミは通常の家庭用の殺虫剤ではほとんど効果がありません。かといって、人が住んでいる室内で強力な殺虫剤を使うわけにもいきません。

少なくとも現状では、そうそう一般家庭に入ってくるものではないと思いますので、私としては「気にし過ぎなくてもいいのでは」って言いたくなりますけどね。

ただ、トコジラミってものがいて、かゆくなったら寝具の隙間に血糞がないか一応チェックしてみよう、といった知識や発想はもっておくとよい。実際に家に侵入されたら被害は大きいですし、さすがに私も自宅でトコジラミと一緒に暮らしたいとは思わない(笑)。

もしも家庭でトコジラミが発生してしまったら、費用はかなりかかるようですが、専門業者に駆除を依頼するのが無難な対応かと思います。

(聞き手・構成=ライター・堤美佳子)
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