学生が自ら警備していた

対策委員会のメンバーも見回りをしていたそうですが、オレンジのジャンパーを着た人たちは、芸術祭の警備を担う執行部の学生だったのだそうです。

10代とか20代前半の大学生が、最も光り輝き楽しんで青春を謳歌できる学園祭で、真剣な顔をして構内に点々と立ち、学生たちが“1人で勝手に婚活パーティー開催おじさん”の餌食にならず安全に学園祭を楽しめるように、警備しているのです。それに対して、大学側は何も対策をできていないといいます。だから学生が自らやるしかないのです。これはとんでもないことです。

その事実を、2023年12月12日に配信された津田大介さんの番組「ポリタスTV」の、ギャラリーストーカーについての回で、私は知りました。YouTubeで今も視聴することができます。

問われる美術大学|ギャラリーストーカー問題|画廊などで女性作家に付きまとう「ギャラリーストーカー」。美大に対処を求める学生に対して美大の対応はまちまち。根深いこの問題の現状を探る

この配信に、武蔵野美術大学ギャラリーストーカー対策委員会代表の松野有莉さんが登壇しています。

※編集部註:初出時、「オレンジのジャンパーを着た人たち」について説明不足がありましたので加筆しました(1月26日16時33分追記)

武蔵美で起きたギャラリーストーカー事件

松野さんは現在、武蔵美の油絵学科の4年生。

もともとのきっかけは、2年ほど前に武蔵美の中で起きたギャラリーストーカー事件だといいます。その年の卒業制作展で、当時の4年生を中心にたくさんの武蔵美生につきまとい、連絡先を聞き出したり盗撮をしたりする人物が現れたそうです。この人物はもともと武蔵美関連のイベントに出没してはつきまといを繰り返していたので、この時に捕まえることができました。しかし大学の対応としては、警察に連れていったり事件化することはできないということで、代わりに「武蔵美のイベントを出禁にする」という誓約書を交わしたそうです。

半年後、この人物が松野さんの個展にやって来ました。

その人物だとの認識があったので被害は回避することができましたが、「私も何をされていたか分からない」と強い危機感を持った松野さんは「これからも油絵科の展覧会がたくさんあるから、またあの人が来るかもしれない」と、油絵学科の研究室に対策を強化することができないかお願いしに行ったのが始まりということです。

個展というのは小さなギャラリーで行われますし、基本的に窓などが少ない密室です。そこに、ヤバいことをしまくってすでに出禁になってる人物が現れたら、はちゃめちゃに怖いと思います。中年の私だって男性だってパニックになるでしょう。

松野さんは2023年の4月から、大学に対してもっと本格的・具体的に対策してほしいと訴え始め、そんな中協力してくれる友人が増えてきて、団体と呼べるくらいの人数になったと語っていました。