適任者を見つけるには課題の言語化が不可欠

もちろん、最初に訪ねた経済学者がピッタリの適任者とは限りません。

しかし、最低限の経済学の教養をもって課題を言語化すれば、相談を受けた研究者も、「そういう課題であれば、この分野の研究のほうが提案できるのではないか」と別案を提示するなど、様々な提案ができ建設的な相談になると思います。

研究者には研究者のネットワークがありますから、相談された課題に対応可能だと思われる研究者たちを紹介してくれるかもしれません。

第1回でも述べましたが、2000年代以降に、アメリカで経済学がビジネスに活用されているさまを目撃してきた経済学者が、今の日本には一定数います。

つまり、学者サイドでは、すでに「自分たちの知見がビジネスに生かせる」という認識が広がっている。したがって、ある程度、経済学の共通言語で課題を説明することができれば、そこから解決への道がぐんと開ける可能性は十分にあるのです。

自然にたまったデータは使い物にならない

ビジネス課題の解決に経済学を取り入れる際に、一番ものをいうのは「データ」です。IT化が進み、各企業がビッグデータを得られるようになったことで、以前よりも格段に経済学をビジネスに活用しやすくなりました。

今まで私が企業・経済学者と一緒に携わってきた案件の中でも、データ分析に関する相談は、かなり多くを占めています。

「自社データがたまってきたので分析して、売り上げにつなげていきたい」
「顧客データを活用して、アップセルを狙っていきたい」

などは、よくある相談です。

しかし、こうした相談からは、残念ながら形になりにくいのが実情です。なぜなら、「これまでにたまったデータさえあれば、学知がうまいことやってくれる」わけではないからです。

データはデータでも、ただ単純に集められたデータでは、いくら有能な経済学者でもできることは非常に限られてしまいます。そして、データ分析をすることを意識してためている企業は、思いのほか少ないのが現状です。

過労のビジネスウーマン
写真=iStock.com/PrathanChorruangsak
※写真はイメージです