「脱プラ運動」の高まりで、プラ製ストローを紙製に置き換える動きが相次いでいる。このうちコンビニ大手のセブン‐イレブンでは、コーヒー用のストローを紙製にするのではなく、環境配慮型の素材に変えた。その裏側には、セブン向けにストローを供給する「日本ストロー」の奮闘があった。連載「瀬戸内ルネサンス」の番外編として、ジャーナリストの牧野洋さんがリポートする――。(第17回、「日本ストロー編」前編)

なぜセブン‐イレブンには紙ストローがないのか

コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパンは環境経営を全面に打ち出している。2023年の夏には環境配慮型店舗の実証実験を始めたばかりだ。

それなのに、アイスコーヒーとセットで提供されるストローは、一見すると普通のストレートストロー(シングルストロー)。「環境に優しい」とされる紙ストローではない。来店者の多くは「昔ながらのプラスチック製」と思っているかもしれない。

セブンカフェのコーヒーマシン
筆者撮影
セブンカフェのコーヒーマシン。アイスコーヒー用のストローは一見、普通のプラストローに見える

昔ながらのプラスチック製とは、石油由来のポリプロピレン(PP)製ストローのことだ。

2015年、ウミガメの鼻にストローが突き刺さった動画がユーチューブへアップされ、瞬く間に拡散。それ以降、脱プラ運動が世界的に盛り上がった。

合言葉になったのが「プラストローから紙ストローへ」。スターバックスやウォルト・ディズニー、マクドナルドといった米系有力企業が相次ぎ紙ストローへ移行した。

それと比べると、セブンの反応はいまひとつのように見えるが、実際は違う。

「環境にやさしい植物由来のストロー」とは

実は、セブンのストローはPP製ではない。環境配慮型の海洋生分解性プラスチック「PHBH」だ。ストローが入っている袋には小さな文字で「環境にやさしい植物由来のストロー」と書かれている。

ストローの袋には「環境にやさしい植物由来のストロー」とある
筆者撮影
ストローの袋には「環境にやさしい植物由来のストロー」とある

製造元は大手ストローメーカーの日本ストロー(本社:東京・品川)だ。1年半にわたって化学メーカーのカネカと共同開発プロジェクトを進め、2019年にPHBHストローを完成させている。

PHBHは100%植物由来であり、海洋に投棄されても時間がたてば自然に分解される。原料はパーム油だ。

日本ストローの稲葉敬次社長は「静岡県富士市にある田子の浦という港で実験したことがあるんです」と打ち明ける。

「当局の許可を取ってPHBHストローを海の中に入れて、半年以上放置してみました。するとストローはきれいに分解して無くなっていました。これならウミガメ問題は絶対に起きませんよね」