しかし、余命宣告を受けたとしても、あまり心配しすぎるのはよくありません。もちろん、もう少し丁寧に言うことが増えてきたようですが、いずれにせよ短期間での余命を告げられることが多いようです。

なぜなら、余命の期間は、患者さんには短めに言うのが医者にとって常識だからです。どうしてそんな患者の心を曇らせるようなことを言うのかというと、ひとえに医者自身の保身のためです。

たとえば、「あと半年の命です」と伝えたものの、仮に三カ月で亡くなった場合は「あの先生はヤブ医者だ」と恨まれてしまいます。反対に、「半年」と伝えていた余命期間を越えて、1年以上生きられた場合は、「先生のおかげで長生きできました。どうもありがとうございます」と感謝されるでしょう。

心ある医者は余命宣告をしない

つまり、どう考えても短めに言っておいたほうが、医者にとってはリスクが少ない。ただ、患者さん本人にとっては、余命宣告を短めに言われること自体はたまったものではありません。

精神的なショックが大きくて、気持ちが落ち込み、中には「自分はもう少しで死んでしまうのだ」という思いからうつ病になる方もいらっしゃいます。

心理状態は免疫に大きく影響するので、QOLの低下はもちろん、死期を早めるリスクもあります。

病棟でベッドに横たわる高齢患者
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本来、心ある医者であれば余命宣告はしません。仮に嘘であっても「まだまだ元気でいられますよ」「同じ病気で三年以上生きておられた方もいます」などと言って元気づけてあげるべきなのに、自分の評判を優先するがゆえに、患者さんの心理的インパクトなどを考えず、短めの余命を宣告するのです。一方、私の知る名医と言われる方の多くは、治療が難しいことを告げても余命は伝えないそうです。

もちろん生前に財産整理や家族への遺言作成などを行っておきたいという方もいると思います。知りたいという方は「最悪のケースを教えてください」と質問するのが良いでしょう。

その際、短めの余命を言われるケースが多いと思いますので、過剰にショックを受け過ぎない心構えが重要です。

説明をしない医者はダメな医者

もう一つ、私がつくづく日本の医者には心がないと思うのは、治療に対する説明が非常に不足している点です。

私は、どのような患者さんであろうと、その治療法をきっちりと説明します。自由診療で治療を行う場合は、金額についても包み隠さずお知らせします。

もしその説明を聞いた上で、それでも「受けたい」というのならば治療を進めますし、そうでないなら別の方法を考えます。きちんと説明し、相手の理解を得るのが基本なので、治療方法を勝手に押し付けることはありません。