※本稿は、深作秀春『100年視力』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
視力検査で「正視」の人は非常に少ない
年を重ねると、多くの方に「近視」「遠視」「乱視」「老眼(老視)」が見られます。
視力検査は、非常に身近な視機能の検査ですが、これは、遠方5メートルの距離で視力表を見るものです。
水晶体を厚くして焦点を合わせようとするのを「調節」といいます。この調節が入ると、焦点の位置が変化して、安定した検査ができません。調節が入らない、この5メートルの距離での視力を測ります。
このとき、見ているものからの光は平行な光線として目に入ってきて、平行光線は角膜でまず内側に曲がります。内側に曲がった光はさらに次の水晶体という凸レンズでより内側に曲がります。2段階に光が曲げられて内側で重なる焦点を結びます。
ところが、この光の屈折や焦点の位置に異常が起こると、くっきりとは見えなくなります。それが、「近視」「遠視」「乱視」です。
5メートル離れたこの距離で1.0ほど見える目を「正視」といいますが、現代は正視の人の割合は、非常に少なくなっているのが現実です。正視の人の目の長さ(眼軸/角膜から網膜までの長さのこと)は、約24ミリほどです。
たった1ミリ伸びるだけで視力1.0→0.1まで低下
一方で、「近視」の人は、この5メートルの距離で視力表がよく見えません。近視の人の目は、長くなっていて、たとえば視力が0.1の人では、眼軸は25ミリまで伸びています。
眼軸が長いほど、入ってきた光の焦点を結ぶ点は目の内部(網膜の手前側)に来てしまい、遠方がよく見えません。近視の目は、伸びてしまった目、ということです。
覚えておいていただきたいのは、眼軸が1ミリ伸びるだけで、視力が1.0から0.1まで落ちてしまうということ。わずか1ミリの差と思うなかれ。「目が伸びる」ということは想像以上に大きな問題です。
強度近視の人では、眼軸が30ミリほどの人は日本にも多いのです。遺伝的な近視もありますが、後天的には、眼球が柔らかくて、眼圧によって目が伸ばされて長くなり、近視が進みます。
一方で、「遠視」とは目(眼軸)が短い目です。
平行に入ってきた光線が結ぶ焦点が、目より外側にはずれてしまいます。「遠視」の人は、遠方を見る際も、遠視の部分を調節するために、毛様体筋が緊張して水晶体を厚くしてカーブを強くし、光をより強く曲げなくてはなりません。このために、常に目が疲れます。
とくに近くはより調節が必要なので、より見えにくいのです。つまり調節力が落ちて近くが見えにくい「老眼」を早くから感じます。