栄養素が足りなくても「メタボ」になる

メタボリックシンドロームという言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。

「メタボ」の略称で、すっかり世の中に浸透した言葉といえますが、正確な意味をご存じでしょうか。

メタボリックシンドロームというと肥満症のようなイメージを持っている人が多いと思いますが、メタボリックは日本語に訳しますと「代謝」、シンドロームは「症候群」です。

言葉の意味としては「代謝性の症候群」になり、代謝異常症候群とも呼ばれています。

つまり、体内で代謝がうまくいかないことによる症候群で、その結果として肥満になり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を起こします。ひとつひとつは軽症でも併発しているため、動脈硬化が進みやすくなります。

では、なぜ、代謝がうまくいかないのでしょうか。

これはヒトの体に必要な栄養素不足とエネルギーの過剰が原因として考えられます。

メタボリックシンドロームの対応には体重のコントロールが必要です。私たちは「体重のコントロール」と聞くと、食べすぎ、特に糖質のとりすぎをイメージしがちです。

もちろん、糖質をとりすぎている人もいますが、中には糖質を減らすことが解決法ではない人もいます。人によっては足りない栄養素は糖質の代謝に必要な栄養素かもしれないからです。

過剰なエネルギーを減らすとともに、代謝の滞りをなくすために栄養素をしっかりとり、コントロールすることがメタボ対策には必要です。

糖質制限ダイエットはしないほうがいい

現代人は糖質をとりすぎだといわれますが、同時に過度な糖質制限のダイエットなどによる「糖質不足」も問題です。

なぜ、糖質が少なすぎる食事がよくないのでしょうか。

私たちの細胞の中には、ミトコンドリアというエネルギーをつくる発電所のようなものがあります。ミトコンドリアは糖質から代謝された物質からエネルギーを取り出しています。つまり、糖質が主要なエネルギー源なのです。

「糖質を使わずに体脂肪をエネルギーとして使って欲しいな」といいたいところですが、構造上、できません。ミトコンドリア内で脂質の一部がエネルギーを抽出する回路(TCA回路)で使われるためには、糖質から作り出された物質も必要です。

つまり、体脂肪を使いたくても脂質からエネルギーを取り出そうとするためには、ある程度の糖質が必要になります。

糖質が足りない場合はアミノ酸や乳酸なども使われますが、これらはそのままTCA回路には入ってきません。違う場所で、アミノ酸などから糖を作り出した上で代謝され、最終的にTCA回路に入ります。

これらのアミノ酸は、筋肉などのたんぱく質から分解してつくり出されたものも含まれます。つまり、糖質が少なすぎると、大切な筋肉が分解されてエネルギーとして使われてしまいます。