対面ではおとなしいのに、文章を書くとうって変わって高圧的になる人がいる。離婚や男女問題に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「私はそんな人を“書面弁慶”と呼んでいる。彼らは、中高年世代に一定数存在し、周囲が驚くような言葉を平然と口にする。また、夫婦関係をやり直したいと思っても謝ることができず、相手に非を認めさせようとしてしまう」という――。
※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。
何かを書いている人の手元
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気になることはすべて貼り紙に

主婦のA子さん(61歳)は、4歳年上の会社員の夫、25歳の長女と3人で暮らしていました。30歳の長男は結婚して妻と住んでいます。

昔ながらのサラリーマンだった夫は、定年退職して毎日家にいるようになりました。すると夫は、それまで無頓着だった家のことにあれこれと口を出すようになったのです。

A子さんの毎日の掃除や洗濯をチェックして、効率が悪い、こうしたらいいと口を出すものの、手伝いは全くしません。A子さんがスーパーで買い物をしてくると、買ってきたものをチェックして、こんなものはいらない、不要な出費をしていると言ってきます。

やがて夫は、家中にメモを置いたり貼り紙をしたりするようになりました。

掃除機をかけたのにごみが残っていると、そこの壁に「掃除が不十分な箇所あり。再確認せよ」という紙が貼られます。壁の電気のスイッチや換気扇のスイッチには「消し忘れに注意!」「消し忘れた場合電気代○円の無駄」という付箋があちこちに貼られるようになり、気が付くと家中が貼り紙だらけになっていました。

とはいえ、やはり夫は手伝いはしません。ごみは拾わず、消し忘れた電気に気づいても消さず、ただ貼り紙や付箋だけが増えていくのです。A子さんは「自分でやってくれればいいのに」と思っていました。

そんなある日、夫が過去の預金通帳を全て出してきて、リビングで何時間もかけてチェックし始めました。

そして、まとまった出費を見つけては、A子さんに「何に使ったんだ」と聞いてきます。長男の塾代、大学の学費、一人暮らしの引っ越し代、長女の学費……。A子さんが記憶を頼りに答えていると、夫は長女の進学関連の出費に目を付けました。