実は古い価値観に立った分断を促進させる発想

OECD(経済協力開発機構)の「Education 2030」は、2018年に義務教育に上がった子どもが18歳を迎える2030年に向けて必要なコンピテンシー(能力)として、「新たな価値を創造する力」「対立やジレンマを克服する力」「責任ある行動をとる力」を挙げました。

社会の変化は激しく、未来は不確実です。新しい時代にふさわしい価値を生み出すことや、異なる価値を持つ相手と対話できること、貧困や天然資源の枯渇といった地球規模の問題に対して関心を持ち行動することなどが、これからの子どもたちには求められるとされているのです。

そう考えると、「今どき英語くらい、プログラミングくらいできなきゃ大学受験で戦えない」という発想自体が、古い価値観に立った、分断を促進させる発想だということが見えてきます。わたしたちは、何のために学ぶのでしょう。貧しさや抑圧のある社会を「仕方がない」と受け入れ、「自分は有利な人生を送りたい」から学ぶのか。それとも、自己や他者の抱える課題を見すえ、貧しさや抑圧を減らすために何ができるかと考えるために、学ぶのか。

「子どもの未来」を見すえた関わりは、「わたしたちの現在」を問い直すことから始まります。子育てや教育のなかで大人の側こそが、新しい価値を生み出せるか、他者と協働できるか、未来への責任を自覚できるかを、真剣に考えていかねばならないでしょう。

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【教育格差】

教育格差はさまざまなかたちで存在しています。教育社会学者の松岡亮二さんは、現代日本社会を「生まれ育った家庭と地域によって何者にでもなれる可能性が制限されている『緩やかな身分社会』」だといいます(『教育格差』2019、ちくま新書)。同書によれば、2015年に20代の男性では、父親が大卒であれば本人も80%が大卒になった一方で、父親が非大卒の場合は本人の大卒の割合は35%でした。また、三大都市出身者であれば58%が大卒になりましたが、非三大都市出身者では45%でした。

このように、親の学歴や出身地域という本人の努力や選択とは関係ない事がらが、本人の教育達成をある程度決めている現実があります。