自殺者数が最も多いのは50代、うつ病も40代と50代が多い

そしてもう一つ、「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンという神経伝達物質が減ってきます。セロトニンは脳内で分泌されることで幸福感や心の安定感を生み出しますから、メンタルの健康にとって重要なホルモンということになります。

つまり更年期というのは、ただ単に男らしさ、女らしさが失われて中性化するだけでなく、メンタルな面での大きな転機、はっきり言って危機を迎える時期でもあるのです。その結果、どうなるでしょうか。

令和3年の年齢階級別自殺者数をみると、もっとも多いのが50代で、わずかの差で40代が続きます。

さらには「年齢別患者数・躁うつ病」の年齢別患者数を見ていくと(こちらは令和2年10月のデータ)男性はやはり50代がいちばん多く、女性は40代になっています。いずれにして40代50代の男女にうつ病が多いのです。

ソファに座り、頭を抱えている女性
写真=iStock.com/years
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ただしこのうつ病患者の多さには社会的・環境的要因も含まれているはずです。男性の場合でしたら職場で重い責任を負わされたり人間関係のプレッシャーなどがあり、女性の場合も子どもが自立したことで母親の役割が終わって寂しさが生まれたり親の介護が始まることなども考えられます。働いている女性には当然、男性と同じプレッシャーがかかってきます。

日本ではまだ一般的にはなっていない「ホルモン補充療法」

ではどうすればいいのか。ものすごく単純な答えを出せば、ホルモンバランスの変化が、男性は男性ホルモン(テストステロン)の減少、女性は女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって起こるならそれを補充すればいいことになります。

男性ホルモンは加齢だけでなく、ストレスによっても減少することがわかっています。50代の男性が仕事や職場で強いストレスを受けるとそれだけで男性ホルモンは減少し、それによってストレス耐性が弱まればさらに男性ホルモンが減っていくという悪循環を起こします。「何となくやる気が出ない」とか「疲れが取れない」といった自覚を「齢のせいだろう」とごまかし続けてしまうと、ほんとうのうつ病にもなりかねないのです。

ホルモン補充療法は欧米では抵抗なく受け入れられていますが、日本ではまだ、あまり一般的ではありません。これは私の感覚ですが、どうも日本人というのは病気でもないのにマイナス面を物理的な方法で補うという処置に抵抗を感じるような気がします。たとえば美容整形とかカツラつけるといったことでも、そういうのは「反則だ」という意識があるようです。「あるがままを受け入れよう」という発想です。