欧米でセレブに大人気のダイエット法

パレオダイエットは、ここのところ、アメリカやヨーロッパでもっとも人気の高い健康法です。「パレオ」は水着をカバーするスカートのことではなく、「旧石器時代」を意味する「パレオリシック」の略。直訳すると「旧石器時代の食事法」になります。

海外では専門のレストランや雑誌が作られるほどのブームを呼んでおり、マシュー・マコノヒーやアンジェリーナ・ジョリーのようなハリウッドスター、コービー・ブライアントなどのプロスポーツ選手が実践。今も愛好者は増え続けています。具体的には、以下のようなメリットが得られます。

・毎日、お腹がいっぱいになるまで好きなだけ食べてもOK
・腹筋がうっすら割れた細マッチョ体型を、死ぬまでキープする
・エクササイズは週に30分しかしない
・がんや糖尿病、慢性疲労とは無縁の体を手に入れる
・少しのことではヘコたれない強いメンタルを保つ

要するに、好きなだけ食べても細マッチョな体型がキープできるうえに、慢性疾患のリスクも激減、ついでにメンタルまで強化されるわけです。美と健康にうるさいセレブからの支持が厚いのも、当然の話でしょう。

科学的に証明されたパレオダイエットの有効性

パレオダイエットの科学的な検証が始まったのは、今からおよそ20年前のこと。メルボルン大学が太りぎみの50代男性を集め、オーストラリアの先住民であるアボリジニの伝統的な食生活にチャレンジしてもらったのです(※1)

体にペイントをした男性のイメージ
写真=iStock.com/chameleonseye
※写真はイメージです

その結果は、目覚ましいものでした。参加者は7週間で平均8kgのダイエットに成功。中性脂肪やコレステロールの数字も大幅に改善し、なかには糖尿病がほぼ完治した人までいたというから驚きです。

また、2015年には逆パターンの実験も行われています。ピッツバーグ大学の研究チームが、南アフリカで昔ながらのライフスタイルを送る20名の男女を集め、アメリカ人の平均的な食事をしてもらったのです(※2)

すると、2週間後に大きな変化が起きました。どの参加者も実験前は至って健康だったのに、ピザやバーガーを食べ始めてからは急激に全身の老化が進行。血液検査を行ったところ、大腸がんの発症リスクも激増していました。どうやら、先進国の食事は、想像以上にダメージが大きいようです。

ほかにも似たような研究は多いですが、なかでも科学的な信頼性が高いのは、コクラン共同計画が2015年に行ったメタ分析でしょう(※3)

これは、ここ10数年の間に行われたパレオダイエットの実験から、質の高いデータだけを選び、159人分のデータをまとめあげた論文です。その結果は、ズバリ「パレオダイエットは国際的なメタボ予防ガイドラインより効果がある」というものでした。「国際的なメタボ予防ガイドライン」とは、全粒粉のシリアルを食べ、低脂肪の乳製品を摂り、脂肪を減らすという伝統的な健康法のこと。この方法と比べて、パレオダイエットはウエストサイズと高血圧、中性脂肪を減らす効果が高かったわけです。

※1 Kerin O' dea “Marked Improvement in Carbohydrate and Lipid Metabolism in Diabetic Australian Aborigines After Temporary Reversion to Traditional Lifestyle”(1984)
※2 Eva Winning Iepsen, et al “Successful weight loss maintenance includes long-term increased meal responses of GLP-1 and PYY 3-36”(2016)
※3 Eric W Manheimer, et al “Paleolithic nutrition for metabolic syndrome: systematic review and meta-analysis”(2015)