所属タレントの覚醒剤中毒や自殺も相次ぐ

しかし、少年たちの話を聞くと、彼らの置かれた立場はやはり放置できない問題だと分かります。同時に、彼らの素行も相当なもので、10代半ばというのに、たばこ、酒は当然という少年たちでした。取材に行って待ち合わせても、午後7時の約束が夜中の2時になるようなことも普通にありました。これは仕事をさせている大人たちの問題である、つまり組織の問題として取り上げるべきだという考えに達しました。

しかし、真に問われるべきは事務所の責任です。少年を集め、働かせる組織なのに、飲酒、喫煙を放置している。深夜労働はあたりまえ。賃金は極めて安く、深夜電車ギリギリで帰るなど、これだけでも十分児童虐待に当たります。

また、フォーリーブスの北公次をはじめ、所属タレントの覚醒剤中毒や自殺も相次ぎます。ジャニーズ事務所は、歌も踊りも演技も教え方が中途半端で、アイドルでなくなると仕事がなくなってしまうというのが、芸能事務所としてのみならず、少年を労働させる組織として致命的な欠陥でした。

ジャニーズのタレントが、一度脚光を浴びたのに、その後転落の一途をたどるのは、他の芸能事務所のように、アイドルをやめても脇役の俳優になるとか、それなりの俳優教育や踊り、歌、作曲、作詞などの訓練をされていないからだと思われました。つまりはジャニー喜多川のセンスで抜擢され、個人の趣味により興味がなくなると捨てられるという構造がジャニーズ事務所の特徴であり、ここには問題が大いにあります。この構造が見えてきたあたりから、文春の顧問弁護士である喜田村洋一弁護士を含めて、ジャニーズ問題を法的にどう捉えるかの議論を重ねました。

性的虐待を軸にしようという方針は、この議論のなかで熟していきました。セクハラ自体が大きな社会問題になりかけていた時期で、ある程度の大会社ではセクハラ講習なども開かれていましたが、正直、その一方で世間一般にはセクハラはまだ重視されてはいませんでした。