ルールや法から逸脱した作家

バンクシーはアーティストでありつつ、社会を変えようと活動するアクティビストです。

彼の作品は実際の紛争地帯に残された政治的なメッセージの強いものだったため、社会運動のための作品とも評されました。このような作家のことを、アーティストとアクティビストをもじって、「アーティビスト」と呼びます。

彼は美術を通じて社会的なメッセージを発信しようとしました。彼の手法は「グラフィティ・アート」と呼ばれる、路上にスプレーで落書きをするストリート・アートの1つです。

「グラフィティ」は日本語にすると「落書き」と訳されるものです。

ここで、「路上にスプレーで落書きするなんて犯罪だ! 社会に迷惑をかけるんじゃない!」と言いたくなる人もいるでしょう。路上に勝手にスプレーを塗布するグラフィティ・アートは、ほとんどが器物損壊や不法侵入となる犯罪です。バンクシーの作品も非合法なうえに、そのほとんどが皮肉を交えた社会批判です。

グラフィティ・アート界でも異端

さらにバンクシーは美術界からは扱いづらい立ち位置にいます。なぜかと言うと、彼は美術的評価よりも世の中にメッセージを届けることを優先した作家だったからです。彼の使う「ステンシル」という手法は、美術的評価が低い手法でした。ですが、路上で素早くかつクオリティの高い作品を描くためには最適の手法だったのです。

彼の使った「ステンシル」という技法は、あらかじめ文字や絵などをくり抜いた型を使い、そこにスプレーを吹きかけたりして転写するものです。素早く目的の造形を描けるものの、ステンシルは「転写」の技法なので、一から描くべしとされていたグラフィティ・アート界からは異端だったのです。

世間に対して反抗的な人というのは、セクシーな魅力がただようものですよね。さらに、彼はいまだ正体を明かしていない、素性不明の覆面アーティストでもあります。謎めいたかっこよさと相まって、バンクシーの人気はどんどん高まりました。たとえ世が決めたルールや法から外れていたり、美術界に認められたりしなくとも、実際に人々の心をつかんだ作家は絶大な影響力を持つのです。バンクシーはこの影響力を利用して、社会的なメッセージを発信している作家です。

バンクシーのスゴイところ
自身の人気すらも利用して、さらには美術的評価を得ることよりも人々にメッセージを届けることを優先して作品を描きました。彼の作品を見ようと思った人は、社会問題の渦中へ赴き、現実を目のあたりにすることになります。