「右」「希」「必」「飛」が間違いやすいが…

〈「正しい」とされている書き順(筆順)〉

どれくらい合っていましたか。「え? この漢字ってこんな順序で書かなければならないんだ」と驚かれた方がいるかもしれませんね。なお、小学生の子どもたちを指導していると、⑤⑧⑨⑩で間違えてしまうケースが目立ちます。

ところで、中学入試の国語では「書き順(筆順)」がどれほど出題されるのでしょうか。

結論から申し上げると、「ほぼ出題されない」のです。正確に言えば、かつてはよく出題されていた書き順(筆順)が近年ほとんど見られなくなっています。

わたしはこの傾向を大変喜ばしいことと考えています。

お気づきの方がすでにいらっしゃるでしょうが、先ほどの問題の答えにあたる部分をわたしは「正解」と明記せず、「『正しい』とされている書き順(筆順)」と記載しています。どうしてでしょうか?

「『正しい』書き順(筆順)」などというのは実はこの世に存在していないからなのです。

現在「『正しい』とされている書き順(筆順)」は、1958年(昭和33)年に当時の文部省から出された「筆順指導の手びき」に盛り込まれています。これが書き順(筆順)の基準になっているのですね。書家の意見を参考にしたと言われています。

しかし、この手引きの中には「本書に示される筆順は、学習指導上に混乱をきたさないようにとの配慮から定められたものであって、そのことは、ここに取りあげなかった筆順についても、これを誤りとするものでもなく、また否定しようとするものでもない」と書かれているのです。びっくりですね。

さらに、いまの子どもたちが使用している教科書には「漢字の筆順は、原則として一般に通用している常識的なものを記載している」といった旨のことが書かれています。先ほど、「筆順指導の手びき」に書家の意見が反映されていると申し上げましたが、楷書、行書、草書では、字形も筆順も変化するものですし、書道の流派によって筆順が異なる場合があるのです。