性格診断という新しい手法
マーケティング業界では「定性調査」とよばれる、1対1でのヒアリングや、グループインタビューを通して、個々の意識や行動を探る調査方法があります。これに対し、データを集計し分析する「定量調査」とよばれる調査方法もあります。
私は、このうち「定性調査」の結果こそ、数値化して「見える化」することが大切だと感じ、20年以上前から取り組んできました。
そして、この定性的なものを定量化するスイッチエンジンとして有効なのが性格診断でないかと考えました。
なぜなら「20代女性、都内1人暮らし、IT企業の事務、土日祝日休み」というセグメントにピンポイントで広告をリーチさせることができたとしても、流行りものにすぐ飛びつくタイプか、自分がいいと思えば値段が高くても買うタイプか、シンプルでシックなものを好むかなど、その人の「好み」や「性格」、さらには「価値観」に合っていなければ、リーチした先の「購入」には至らないからです。
5000万回以上の診断データでわかったこと
そこで、心理学と統計学を組み合わせた「ディグラム診断」を2013年に開発。現在にいたるまで、延べ5000万回以上の診断データを取ってきました。
すると、たとえば一般的に日本人に人気の国内旅行先といえば「沖縄」「北海道」「京都」がトップ3を占めます。ところがこれを性格別に分析してみると、まったく違うランキングになるのです。つまり、性格というフィルターを加えることで、結論は大きく変わりうることがわかってきたのです。
「ディグラム診断」はこれまで、各企業とタッグを組んで、さまざまなマーティングのプロジェクトを行ってきました。
たとえば、大塚製薬の自分に合った夜活を見つける「夜活診断(※1)」や、文部科学省の留学を見える化する「ポテンシャル発掘診断(※2)」(文部科学省「トビタテ!留学JAPAN」)などなど。すでにサービスが終了しているプロジェクトも含めれば、みなさんもすでにどこかで「ディグラム診断」を利用したことがあるかもしれません。
※1 https://www.otsuka.co.jp/soy/yorukatsu/shindan/index.html
※2 https://tobitate-mext.jasso.go.jp/potential/
「性格」で提供する商品・サービスは変わる
たとえば、はやりのAIチャットボットであるChatGPTに「おなかが空いた」と言っただけでは、「おなか空きましたね」で終わりです。「東京駅近辺でランチがとれるところを知りたい」と言っても、お店が多すぎて絞り切ることができません。
ところが、「ここのところずっと忙しくて、今日も半徹。いま、やっとミーティングが終わったんだけれど、昼ごはんには何を食べればいいかな。東京駅周辺で、元気が出るものが何かないか?」となれば、「『うなぎ』はどうでしょうか?」と出てくるかもしれません。