目標設定をミスするとズルする人が出てくる

よくあるのが、

「プロセス目標(たとえば行動量など)を多めに入れた結果、“プロセス目標を達成したが結果目標は未達な人”が高く評価されてしまう」

ということ。あるいは、

「わかりやすく、結果目標だけをやたらと高く設定してしまった結果、“周りを蹴落としたり、ズルをしたりしてでも目標達成しようとする人”が生まれる」

というような話もあります。どちらも目標設定でミスしている例です。

あるいは、次のようなケースもあります。

「マネージャーが立てた目標設定の視点が経営陣とずれている結果、チームメンバー全員が目標達成したのに、事業部全体が評価されずに終わる」

これはまさに「Lose-Lose」のケースですよね。経営的にも、現場的にも、マネージャーとしても、誰もハッピーになっていません。

こうしたケースを避けるためにも、人事施策において最も重要なことの1つは間違いなく「精度の高い目標設定」だと思います。

評価が良かった人も悪かった人もモチベーションが高まる

ただ、当然、人間は感情の生き物であり、この「目標設定」だけで人は動かないので、「期末の評価」のほうも重要になります。

そして、僕が個人的に重要だと思っているのは、その期末の評価の際に「期待値を伝えること」です。より具体的にいうと「来期の期待値」です。

経営をしている限り、評価においてはやはり差をつける必要があると僕は思っています(=年功序列はダメ)。ただ、「評価」の対象は当然、前年度のことであり、過去の話です。未来のほうはまたフェアにみる必要がありますし、実際にチャンスはあります。そうしたことを伝えるためにも、「しっかり、来期の期待値」を伝えるということです。

そうすれば、評価が悪かった人も「次何をすればいいか」がわかりますし、評価が高かった人は「さらに成果を出そう」となりやすい。

やる気を持っているビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

以上をまとめると、「期初は目標、期末は期待値」ということになるわけです(実際に人事業務や経営をやられている方は使ってみてください!)。

最後に、この話をもう少し個人に寄せて考えてみるとどうなるでしょうか?

月初に目標を立てたなら、月末に来月の期待値を明確にする。目標は定量的に判断できるものですが、期待値は目標よりは少し抽象的な方向性のようなものです。これを繰り返していくことで、「月初は目標、月末は期待値」というサイクルが自然に作りやすくなると思います。

これは、『仕事の教科書』の中でも紹介した「夜は経営者、朝は実行者」の考え方にも似ています(1人の人の中にも「経営者的な面」と「実行者的な面」の両面があり、夜は「明日の経営者」であり、朝は「今日の実行者」であろうとする考え方)。

ぜひ皆さんの仕事で少しでも役に立ててもらえたらうれしいです。